【24】軍人に絶対なりたくない先住民族が、軍隊で下剋上していくお話 作者(蜂蜜の里) 総評
【24】軍人に絶対なりたくない先住民族が、軍隊で下剋上していくお話
作者(蜂蜜の里)
https://kakuyomu.jp/works/16816927861851827000
⬜️全体の感想
・タイトルについて
6話まで読む限り、タイトル通りの展開になるのはかなり先になりそうです。
この手の長文タイトルは、内容をそのまま書くからこそ意味があるので、タイトルから読み始めた読者は、かなりがっかりするのではないかと。
この先の展開は知りませんが、アニーを主体にした長文タイトルに変えるか、長文をやめ、全体を包括するようなタイトルに変えるかすべきだと思います。
・文章について
なかなかにお粗末ですね。
私が読んだ中でも、ワースト3には確実に入ります。
とりあえず思いつく問題点を書いていきましょうか。
>文法が無茶苦茶
日本語文章を冒涜するレベルの無茶苦茶さです。
文頭1マス下げをやったりやらなかったり。
句点で行を切ったり。
無駄に巨大な改行を入れたり。
ラノベなのでそこまで厳しいことは言いませんが、読みづらく目に余るレベルです。
何より、今作のような歴史上の事件を扱う物語でこの文章力だと、調べた内容自体を疑われかねません。論理を裏打ちするのは、確かな文章力です。小学生の作文で真実を書いても、なかなか信用はされないようにです。
>一人称と三人称が乱雑に入れ替わる
三人称は「神の視点」なので、場面場面で一人称的な描写を入れたり、個人の気持ちを吐露させたりは許されます。
ですが、今作の場合は、比率がおかしすぎます。
一人称の合間に三人称をやってるようなもので、これなら一人称を徹底した方がまだましかと。
おそらく何も考えず、適当に書いているのだと思いますが、まずはその辺を統一することを学んでください。
>描写が極端に少なく、場面を想像できない
とくにこの題材においては、厳しいものがありましたね。
これがテンプレファンタジーとかなら、描写がなくても適当に想像できます。テンプレから踏み出さないので。
ですが、今作の舞台は西部時代のアメリカで、テンプレからは大きくかけ離れています。描写なしに詳細なイメージを浮かべられるのは、西部ものが好きな読者に限られるかと。文化や風習も現代とは違いますから、当然説明が必要になるはず。奴隷制度や先住民族という繊細な題材を扱うなら、なおのことです。
この話の魅力のなさの半分くらいは、描写がなさすぎて物語の世界に入り込めないことが原因だと思います。
南北戦争という渋いチョイスとの落差が激しすぎるので、意図してラノベに寄せている可能性もなくはないですが、ここまで破壊的な文章を書く必要もないので、おそらく素なのでしょう。
ひとまず歴史を調べる際に読んだ書籍の文体を真似て、小説を書いてみてはどうでしょうか。
もしくは、普通のラノベ的なファンタジーから始めるとか。
難しい題材は、まだ無理があるように思えます。
・内容について
こちらも文章に負けず、なかなかのひどさです。
>歴史知識が前に出過ぎ
先にいい点を言っておくと、南北戦争というあまり扱われないジャンルを選んだこと。そしてちゃんと調べていることですね。
私も軽く調べましたが、説明の下手さはともかく、内容的には問題は感じられませんでした。
大真面目にウソぶっこいてる書き手とかたまにいますから、そこは評価したいところです。
ですが今作の場合、調べたものを出したい、見せびらかしたいという気持ちが勝ちすぎです。
いわゆる設定厨に近いもので、物語を丁寧に描くことより、調べた史実を披露したい欲が露骨に出ていて、物語の面白さを阻害しています。
その説明もアメリカの歴史をある程度知ってる前提のような書かれ方をしているので、前知識がある人以外は、けっこうな確率で置いて行かれるはず。
ド素人の私も例にもれずです。一応南北戦争くらいはウィキで調べてきましたが、それでも怪しいレベル。普通の読者がわざわざ調べてくれるとは思えませんので、そうなると対象読者は西部好き、アメリカ好きに限られるかと。そんな人が多くないのは言うまでもありません。
もし作者が「好きな人にだけ読んで欲しい」というスタンスならこれでも構いませんが、だとすれば極度にラノベに寄せたキャラ作りやタイトルも不必要なはず。見る限り、「南北戦争を舞台にしたラノベ」を読んでもらいたいと感じられましたので、そっちの方なら失敗している、という話です。
失敗の理由は、まず素人相手の説明が出来ていないこと。
基礎的な用語(州とか)から伝えないと、素人は理解できません。
中学生に読ませるつもりで、細かく階段を刻んで一つづつ教えるべきです。難しい歴史とか史実なんてもっともっと後。まずはチュートリアルです。
>アニーがナビになっていない
本来、アニーという頭のよくないキャラは、そういった前知識のない読者のナビゲイターに最適のはずです。ドラえもんでいうのび太ですね。
それが機能していないのは、カミラがうまくドラえもんをやれてないからです。彼女の語る国内事情は、アニーを納得させるように書かれていません。アニーも「よくわからん」まま話が進むので、読者も曖昧な理解のまま、さして面白みを感じず、読み進んでしまいます。簡素化、とにかくわかりやすく噛み砕いて、読者に理解させることが最重要です。
>描写が致命的に足りていない
文章でも書きましたが、未知の場所を舞台にする小説の魅力の一つは、自分の知らない時代や国について知ることです。風俗、衣装、自然、歴史、ジョーク、なんでもネタになります。
ですが、今作ではとにかく描写が足りておらず、その魅力を引き出す気配すらありません。
姉妹がどんな場所で暮らし、どんな生活をしているのか。それが描かれないまま、逃走兵に追われて逃げ出しても、読者には場所が移った程度の感覚しかありません。二人の暮らしをちゃんと描写して、初めて「家を追われた」という悲劇を噛み締められるのです。
>キャラが弱い
二人の個性も描写がほとんどなく、あってもテンプレ的で、ラノベの悪い部分だけ採用したような感じです。感情の起伏や姉妹のやりとりも、一応あるにはありますが、どうにも薄味で印象に残りません。記憶に刻まれる鮮烈なシーンがないんです。
アニーのような型破りなキャラがいるのは、けして悪いことだとは思いません。むしろ型破りな部分をしっかりと描くことで、読者に馴染みの薄い北部アメリカの案内をさせる展開は大いにありです。当時ではありえない、現代人なら思わずうなずいてしまう言動を取らせれば、「背景はよくわからんけど、このコは可愛い」という読まれ方もされるはず。今作はその段階に至っていません。主役のパワー不足です。
南北戦争とか置いといて、ひとまず「アニーが活躍する話」を書くことに全力を注いでみてはどうでしょう。タイトル的にいずれは主役が変わるのかもですが、それまでに読者に飽きられては元も子もないでしょうから。
>物語の展開について
キャラを掘り下げる前に進んでしまう感じです。
最初のパーティなど、恋の相手を探すというネタで数話費やしてもいいくらいです。逆に顔見せだけが必要なら、恋愛に焦点を当てる必要がありません。話を面白くしたいなら、あの手この手で彼氏を作ろうとするアニーの悪戦苦闘ぶりをじっくりと描くべきでしょう。そうすればカミラやチャールストンの人となりも伝わり、思い入れもしやすくなるはず。私ならそうします。
マグワイヤの来訪から逃走については、ながら感想でも書きましたが、将軍の娘が暮らす屋敷にしては警備がザルすぎて困惑します。北軍の最高司令官がポンコツという話ですから、なんとかすべきでしょう。それなりの警備がいる前提で構成を組み直すべきかと。
船のシーンは、まあ運命の出会いということで黒髪くんのご都合主義な登場は不問にしますが、せめて銃撃戦なり舌戦なりで、彼のかっこよさをアピールすべきでしょう。その前の逃走場面も、西部劇なら
アクションシーンとして見せ場になっているところです。アニーの乗馬の技前、カミラの奸智などを描ければ、十分に盛り上がる展開に出来そうです。
砦についてからの展開は、まあ先がわかりませんが、ひとまずよいとしましょう。ちゃんと伏線回収されるという前提で、ですけど。
とりあえず、現時点では背景説明はくどく、物語自体は薄味で面白くない、という二重の意味でダメなパターンになっています。
これがせめて物語に惹かれるものがあれば、よくわからないアメリカの話でも我慢したり調べたりしてついてきてくれる読者を期待できるのですが。まずは、そちらを狙ってみてはどうでしょうかね。
⬜️総評
・文章はお粗末。題材とラノベが不協和音。
・マイナージャンルへの挑戦は買うが、まだ早い。
・設定資料より読者の目を意識するべき。
知識はともかく、物語を書く上での基本が圧倒的に不足している印象。
同じ舞台や設定でも、もっとごく短い、登場人物の少ない、文字数も少なくていい短編で練習してから、長編を手掛けるべきではと思います。複数の短編を繋げて長編にするという意識をもってみてはどうでしょう。もっと盛り上がる作品を書けるようになるはずです。
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