【06】ようこそ Light Houseへ(大田康湖) 読みながら感想



【06】ようこそ Light Houseへ(大田康湖)

https://kakuyomu.jp/works/16817330660313761401


さて、六回目のじっくり感想は、大田康湖さんの「ようこそ Light Houseへ」。


大田さんとは、私の自主企画「おっさん(おばさん)の創作遍歴」に参加いただいて以来のご縁です。

私と同世代で、執筆歴も同じくらいだと思います。

その時の参加作品である「私の創作遍歴」が、おっさん直撃の昭和話でありながら、昨日のことのように細部まで細かくて、トリ頭の梶野はいたく尊敬したものです。


ちなみに読んでたのは「私の創作遍歴」だけで、オリジナルの小説はこれが初めてだったりします。


大田さんの執筆のきっかけは、藤子不二雄のパーマンだったそうで。

そのせいか今作の登場人物は、梶野脳内で藤子キャラでした。ライトSFというのもそれっぽいですし。作者イメージと違ってたらすみません。


そんな大田さんのご希望を確認しておきましょう。



企画参加希望です。


・特に意見が欲しい部分。


 カクヨムコン9に投稿予定の作品なので、一万字以内でさらに完成度が上げられる部分があればどこか。


・「梶野ならこう書く」アドバイスは必要か否か。


 アドバイスがあればお願いします。



ふむふむ、一万字以内。

現時点で8500字ですから、1500字以内のパワーアップですね。

割と得意な方向のリクエストです。がんばってみましょうか。


それではじっくり感想、スタートです。



⬜️読みながら感想

二読後の感想を、読みながら書きます。



>第1話 マリティ宇宙港


>「大きくなったね」

二人の再会の場面。

定番ですが、ここは「何年ぶり」と書いた方がやはり入りやすいかと。


>通路の窓の外には黒ずんだ砂漠が広がり

この砂漠が黒ずんでいるのは、何か理由があるんですかね。

一般的な砂漠は砂の色ですし、同じ場面で陽光とあるので陽の加減でもなさそうなので、気になりました。砂鉄の砂漠とか、SFならあり得ますし。


ここで黒い理由を軽く説明した方が、舞台がSFであると読者に伝えられていいとも思います。



>フォンは広い肩幅をすぼめると

「肩をすぼめる」ですね。


>「夕日がきれいね」

 ルチアはドームの外壁に見とれている。

ここは簡潔でいいので、風景描写が欲しいところ。

「SFは描写である」って誰かが言ってましたっけ。



>第2話 フォンの家で


>声をかけようかどうか迷っていた。

声はもうかけてるので、「訊こうかどうか迷っていた」の方が。


>「伯父さん、ふだん家にお客が来ないから照れてるんだよ」

 フォンはルチアを安心させようと明るく言った。


ここら辺、フォンと家族の人となりがさりげなく窺えていいですね。


>「フォンはこれから車に乗るからおあずけね」

自動運転あるんじゃ? と思いましたが、まあドライブするからかな。



>第3話 月のない夜


>ライトが暗紅色の砂を照らしている。

こっちだと赤黒い感じですね。

初見の「黒ずんだ砂漠」も、こっちに寄せて「赤い」と表現した方がいいかも。夕焼け前後の時刻でしたし。


>バギーを降りた2人は、砂を踏みしめながら砂丘を登った。

バギーで登れないくらい砂が柔らかいと。ふむふむ。


>遠くに見えるマリティの町は、建物や街灯の明かりが気候調節用のドームに覆われて光っている。


ここももう少し夜景の描写が欲しいところ。


>フォンはシートベルトを締めるとハンドルを握り、叫んだ。


ここはシートベルトしない方が、危機感が演出できると思います。


>猛烈な砂嵐がバギーを捕まえようとするかのように追いかけてくる。ライトもワイパーも役に立たない中、フォンはナビゲーターの地図表示を頼りにバギーを走らせた。


この場面、もう少し膨らませた方が絶対、読み応えが出ます。

かっこいいフォンを見せられるシーンですし。



>第4話 フォンの来た道


>「戻ってきた僕を見た伯父さんは『今度から帰る時間を言っときなさい』としか言わなかった。僕を信頼してくれてたんだと分かって嬉しかったよ。それから、僕はこの町も伯父さんたちも好きになったんだ」


このエピソードはとても魅力的です。

簡潔なのに情感が伝わって、とてもいいと思います。

フォンにとっても、マリティは灯台だったんですね。


>「友達か。もしかして付き合ってる子とか、いる?」

> ルチアの顔から笑みが消えた。フォンはキャラメルの箱を持ちながらあえて変わらないトーンで話し続ける。


ここは直球過ぎてイマイチ。

もう少しさりげなく伝わるような台詞と表情がいいと思います。



>第5話 ルチアの来た理由


>ルチアはフォンの肩に寄りかかるように体を寄せながら話し出した。


ちょっとここは展開早すぎる気がします。

打ち明けながら距離が近づくくらいの方がよいかも。


>今更新しい人をママって呼ぶのも気が引けてさ。

ルチア、他は父母と呼ぶのに、ここだけママですね。

違和感と言うか、不思議には思いました。

あえてママを使ってるのかも……普段はママ呼びだったとか。

でも、ここだけママにする理由はちょっと弱い気もします。


>「楽しみだな。でもその前に」

> ルチアの手がヘルメットを持つフォンの右手に被さる。

>「フォンは、もうトリュースに帰る気はないの」


一連の二人の語らいの場面ですが、ルチア攻め攻めですね。

正直、ちょっと違和感が先に立ちます。ここは後述しましょう。


二人のやりとり、特に「ここは『ライト・ハウス』だからね」はハマっていると思います。


>しかし、砂漠を見たルチアは声を上げた。

ここの「しかし」はおかしいです。

削ってよいかと。


>確かにヘルメットのライトは付いてないのに、地表が微かに光っている。


ここも情景描写が欲しいところ。

エンド前の見せ場で「光っている」だけなのは、流石に寂しいです。


>「素敵ね。これをフォンは見せたかったんだ」

んん?

なんか展開的に月を見に来たみたいな話になってますが、「月に光る砂漠」を見せたかったんじゃなかったでしたっけ。三話の台詞はそう読めたんですが。

作者の狙いがどちらなのかは不明ですが。ここは後述しましょう。



>第6話 ミンの欠片


>2メートルほどの岩山を見つめた。

岩山は「岩でできた山」なので、このサイズでは岩山とは呼べません。

「大岩」にするか、サイズをもっと巨大にすべきです。


>「ずっとここにあったのかしら」

>「どうでもいいよ。もう帰ってきたんだから」


確かに謎過ぎますが、まあルチアも不思議がってますし、疑問には思わないです。

風で飛んできて挟まったのかもだし。未来の写真なら耐久力すごいのかもだし。


ただ、ここで「両親の写真が見つかる」というシーンが、この物語上必要かといわれると、かなり疑問ですね。強引に見つけさせたわりに、写真が出てくるのはこれっきりですし。後述。


>「『秘めたる思い』。フォン、好きよ」


いや、全然秘めてなかったです!

手つないだり、抱き合ったりしてました!!


>ロビーのスクリーンには『今夜のマリティ宇宙港の天気 晴れ 最低気温摂氏13度 砂嵐確率0%』という画面が映っていた。


「一件落着」のメタファーですね。

表現自体は悪くないんですが、内容的に大嵐!って内容ではなかったので、そこまでのカタルシスを生んでないのは残念。

これが嵐のような恋物語の後の大団円なら効果的だったんですが。


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