第15話 巨大噴火
そうだったんだ。
御池はそうしてできたんだ。
あんなに大きな湖なのに大地が破れてできたとは初耳だった。
塩筒の爺が補足するように言う。
「この狭野の地の向こう遥かに盆地が広がっているだろう。たくさんの湖があるのは知っておるな。あの湖も太古に大地が割れできた穴に水がたまったものなんじゃ。今では湿地になっているところも多いがまだまだ湖の面影が残っているな。その広大の湿地を抜ければ鵜戸へと通じる山道が続くな。お前さんの父君のウガヤさまがお生まれになった産屋を立てたところじゃ。鵜戸は狭野からすれば温かくて住みやすいぞ。わしは寒いのは苦手だからな」
大地が割れるってどういうことなんだろう。
ミケヌはひとたび考えるとどうしようもなく突き進むところがあった。
ずっと考え込んでしまうのだ。
いいところでもあったけれども悪いところでもあることは己が一番理解している。
大地が割れるということ。
かなりの力が起きたに違いない。
大地は震え、空は暗く閉ざされただろう。
そのとき、住んでいた人々はどうなったんだろうか。
すべてが死に絶えたのだろうか。
ミケヌはそのことを考えるとぞっとした。
みんなが死ぬのは嫌だ。
このまま平和に暮らしていければいいんだ。
そんな太古の昔のことだし、もうこれからはないと思う。
そんなことはない。絶対にそうだ。
それにしても、キハチは色んなことを知っているんだ。
どこからその知識をどこで仕入れたのだろう。
キハチは世の中のすべてを知っているのかもしれない。
御池が、大地が裂けてできた話。
本当だろうか、と今さらながら思う。
大地の震えは相当のものなんだろう。
己が知らないところで世の中は動いているんだ。
ミケヌにはその多大な力なんて及ばないと思ったし、何か成しえるとは思えなかった。
すると急に眠くなってきた。
サヤがじっと見ている。
その視線に気づいて眠気が急に吹っ飛んだ。
サヤは見てばかりだ。
また明日にでもサヤと話そう。夜は深くなった。
「父上は怖くないのですか。山がそんな風になるなんて」
ミケヌは父のウガヤのほうを向いた。ウガヤは咳払いをした。
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