第13話 皇子滝
母上や父王の顔が浮かぶとミケヌは急に寒気に襲われた。
そうだった。
死んだら後のことがあるんだ。
ここで命を惜しくはなかった。
キハチの言う通りだった。
とにかく助かって良かった。
ずっと生まれた頃からこの霧島の地にいるとはいえ、危険もまだまだ多いんだ。
狩りはそこで中断した。
ミケヌが御池のそばの沼で溺れかけた話はすぐにタマヨリやウガヤのところまで届いた。
ミケヌがトボトボとうちへ帰ってきたとき、タマヨリは黒髪を振り乱しながらミケヌのところまで駆け寄ってきた。
ミケヌも母のところへ一直線に駆け寄り、声を上げて泣いた。
すると急に恐怖が身体の底から沁み込んできてガタガタと震えた。
そんなミケヌにタマヨリはギュッと抱きしめ、何度も頭を撫でた。
イツセ兄さんがミケヌは末っ子だから甘えん坊だな、と呟いた。
ウガヤがそんなイツセ兄さんをたしなめた。
御池のそばはやっと人の足が通るようになったとはいえ、まだまだ危険も多い。
お前たちもそのことをきちんと胸に刻んで狩りへ行くときは注意するように、と言った。
ミケヌも泣き終えるとしっかりと涙を拭いて夕飯の準備を始めた。
この村ではみな食事の準備をする。
ミケヌも慣れないながら米を炊く準備をした。
木々を拾って土器の中に今年採れた米と水を入れ、炊き込んだ。
水も村の近くの滝から組んだものだ。
ミケヌの住む丘の上の村の下には滝が流れているのだ。その水は村の水田の貯水池もかねており、生活に欠かせないものだった。
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