第11話 弓


 もっと大きな牡鹿じゃないと足りないよな。


 ミケヌもキハチと同じように思った。


 すると、ミケイリ兄さんが弓矢をミケヌに渡した。



「これであの岩まで射ってごらん」


 ミケヌは渡されて困った。


 まだまだ力が足りないんだよな。


 仕方なくミケヌは弓を持ち、矢をつがえ、目線を合わせた。


 大きく弓を広げ、目いっぱいの力を振り絞り、岩まで矢を合わせた。


 ここだ。


 そう思ったとき、手は力を終え、矢は離された。


 岩まであと少しのところで矢は落ちていった。


 あと少しだった。


 まだまだなんだよな。



「あと少しだ。すぐにでもできるようになるさ」


 キハチが矢をつがえた。


 甲高い弦音が響き、あっという間に岩まで射られた。


 キハチにはかなわないな。


 ミケヌも負けるまい、ともう一度矢をつがえた。


 大きく力を引く。肩先から力を入れ、大きく息を吸った。


 やれる。


 やれるんだ。


 そう思った矢先、矢は力をたちまち失い、先ほどよりも前に落ちていった。


 ああ、やっぱり駄目だった。



「ミケヌは力が弱いんだよ。だから、こんな風に終わってしまう」


 それを言ったのはミケイリ兄さんだった。


 しょうがない。


 また練習するしかない。


 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る