よりによって今年から

CHOPI

よりによって今年から

 のどが痛い。鼻水が止まらない。目が痒い。頭痛が収まらない。


 ……全ては花粉ヤツのせい。


 ******


「へっくし!」

「……だいじょ「へっくし!」うぶじゃ、無さそうね……」

「、ごめん、ごめ……へっくし!」

 

 春休み、『卒業記念に』って親友とテーマパークに行く事にした。年明けから何となく、2人で計画を立て始めて、2月にはほとんど形になっていた計画。……それがまさか、こんな形になるなんて……。


「アンタもついて無いよね、今年から花粉症デビューとか」

「ほん……へっくし! ほんとにへっくし! さいあへっくし!」

「落ち着くまで喋らんくていいから」

「ほんとへっくし! ごへっくし! めんへっくし!」

「伝わるもんも伝わらんのよ……」


 去年までの私なら、それはそれは喜んだであろう、お出かけ日和の青天の空。気温もかなり暖かく、上着を羽織ると暑さを感じるほどだった。だけど、今年はそうはいかない。……つまりはそう、花粉大爆発でもあるわけで。


「目、かゆい……、外して水洗いしたい……。鼻も外して全部洗いたい……」

「え、怖い怖い、急なホラー止めてよ」

「頭も痛い、鼻かみすぎて、出てきてるの鼻水じゃなくて、全部脳ミソな気がしてくる」

「いや、グロいな? 想像しちゃうじゃん、止めてって」

「もうなんかボーっとする、会話も脳死でしてる」

「それは通常運転でしょ」


 キレイな桜が咲き誇るテーマパーク。こんな日は遊び疲れたらテラス席でゆっくりお茶したり、待ち時間だってきれいな景色を楽しみながら回れるのに。


「動く前から疲れた、くしゃみ体力使うの、しんどすぎ……」

「しかも気抜くとアンタ、何連発してるのよ」

「わかんない、最初数えてたけど、くしゃみの反動で頭揺さぶられて、良くわからなくなった」

「え、数えようとしたの」

「うん」

「……少しくしゃみ収まった?」

「あ、確かに。今少し収まった」

 はいよ、と言って親友が水を渡してくれる。その優しさに惚れるかと思う。ごめん、嘘。優しいことは認めるけど、惚れるは嘘だ、ごめん、盛った。


 くしゃみが落ち着いたので、ゆっくりと水を身体へ流し込む。少しだけ冷たいそれは、身体の奥に流れていく感覚がわかって、アレルギー症状で火照ってしまった身体にひどく心地いい。

「水、うま……。水分マジ大事……」

「今日、ただでさえ暖かいしね。もう少し休憩して、そしたら少しだけまた外行ける?」

「うん、大丈夫。マジ助かる、ごめんね」

「いや、大丈夫。私も言うて常にアレルギー性の鼻炎持ちだから。言いたいことは、よくわかる」

「あぁ、さすがよ……!」


 卒業と同時に花粉症デビュー。この先一生、忘れられないデビュー話だ。

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