87話 歴史は繰り返す
円卓の会議室には、既にミリアと佐藤さんが座っていた。
俺が着席した瞬間、リモート会議がはじまって、各国の探索協会の代表が映し出される。
驚いたことに、俺でも知っているような最強と名高い有名人ばかりだった。
『アメリカでは三件、どれも他国と同じで悪魔のような風貌だったわ。幸い死者はいなかったけど、重傷者が二十人』
『フランスでは四件、場所はバラバラだが、やはりどれも悪魔のような姿だった。……死者、一名だ』
『イタリアでは五件、一件は海で確認されたが、討伐すらまだ出来ていない。風貌は同上、重軽傷者合わせて三十二人』
翻訳機能が付いているらしく、映画の字幕のように映し出されるが、俺が口を挟めることはほとんどなかった。
藤崎は全てのデーターを打ち込んで、法則性を調べようとしていた。
日本では俺が討伐した一件と、他県で三件だ。他の場所でもたまたまA級探索者がいたらしく大事には至らなかった。
そしてミリアが、とある写真を入手したとのことで、それをボードに張り付けた。
「こちらは能力者が念写したものです」
――言葉を失った。
黒い翼は俺が見たものと同じだ。
だが姿かたちが人間にそっくりだった。
頭に生えている角は赤く、手の平をこちらに向けている。
その鋭い眼光に恐怖を覚えたのは俺だけじゃないだろう。
誰もが沈黙している中、藤崎が声をあげる。
「これは悪魔で間違いないでしょうね」
「ちょっと待ってくれよ、そんなの空想上の話だろ?」
居ても立っても居られなくなり、俺は声を荒げるが、藤崎は冷静だった。
「どうしてそう思うの? ダンジョンが出現するまで、魔物や
「……でも、俺が戦った相手はこんな……人の形はしてなかった」
それについては、と、ミリアが補足する。
「こちらの写真、念写したのは一キロ先からです。だけど、この
『ありえないことだけど、そう思うべきでしょうね』
『呪い……か、ひとまず過去の文献をあさってみる。ミス藤崎に共有させてもらおう』
『承知した。探索協会の総意にかけてこの問題にあたろう――では』
リモートが終了すると、再び沈黙が流れる。
御崎は一言も発しなかった。悪魔を見て、足がすくんでしまったとあの時も言っていたくらいだ。怖かったのだろう。
「キュウ」
「ああ、おもち。俺も同じ気持ちだ」
――戦う、おもちはそう言ってくれた。
「正体不明な相手とむやみやたらと戦うのは得策ではありません。この件については自体を重く受け止め、外出禁止令を警察と共に配布する予定です。しかし社会的な損失を考えると、一週間が限度です」
「一週間で……解決……」
だが愚痴を言ってる場合じゃない。死人が出ているのだ。むしろこの速度で対応策を練ったミリアは凄い。
「申し訳ないわ。本来、私が色々と調べるべきなのよ」
「藤崎はよくやってるよ。だが俺に心当たりがある。もしかしたら、この現状に詳しそうな奴がな」
「山城、それはいったい――……もしかして……」
「ああ、おそらく浮かんだ通りだ」
俺の言葉で、ミリアと佐藤さんが同時に気づく。
「佐藤さん、面会の手配できるか?」
「畏まりました。ですが移動も含めて三時間ほどかかります」
「問題ない。御崎、悪いがミニグルメダンジョンに籠っててくれ。今回はあまりにも危険すぎる」
「……でも……」
御崎に近づいて、そっと手を握る。
「一週間もかからない。俺が絶対解決する」
「……わかった」
なぜなら、闇属性を使用できる人間は現在確認されていない。
なのに
事件後問い詰めても答えることはなかったが、何か知ってることは間違いないだろう。
「阿鳥様、アポカトラズ島刑務所の許可が取れました。車を準備します」
「あーくん、私も行くよ」
「……助かる」
そして俺たちは、――
―――――――――――
【 お礼とお知らせ 】
新連載です、宜しくお願いします!
異世界ハイファンタジー
【勇者に封印されていた魔族、復活したら魔王城が託児所になってました。魔法禁止の平和な世の中、最恐魔族はどう生きる?】
https://kakuyomu.jp/my/works/16817330658730890630
【怠惰な凌辱貴族に転生した俺、努力でシナリオをぶっ壊したら規格外の魔力で最凶になった】
https://kakuyomu.jp/works/16817330658683197420
【退屈な人生を歩んでいたおっさんが異世界に飛ばされるも無自覚チートで無双しながらネットショッピングしたり奴隷を買ったりする話】
https://kakuyomu.jp/works/16817330658801857199
悪魔編、となるかもしれません。
情報が全く出そろわない状況で、阿鳥が導き出した答えは――
果たして何か知っているのだろうか。
「知性のある悪魔強そう」
「これは手こずるかも」
「この話の続きがまだまだ気になる」
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