第114話 準備は進む
「……うーん」
芹沢さんと遊びに行った翌日。
俺は部屋でスマホと睨めっこをしながら、唸っていた。
「さすがにこれは難しいよね……」
昨日、芹沢さんと遊んでいる中で、自分なりにこういう言葉を贈りたいっていうのがある程度浮かんできて、調べて、よさそうなものを見つけることが出来たんだけど……どうにも条件的に厳しそうだったのだ。
「けど、これが1番しっくりくるんだよなぁ」
というか、これ以上にがっちりハマるものが自分の中で思いつきそうにない。
……よし。こういう時こそ有識者に相談だ。もしかしたら代替案でいいものが見つかるかもだし。
思い立った俺は、早速有識者に電話をかけることに。
ワンコール、ツーコールと呼び出し音が鳴り響き、やがて電話口から『はいはーい?』と明るい声が聞こえてきた。
「もしもし、すみません。リリィさん、突然電話をかけてしまって」
『全然いいよー。ちょうど休憩しようと思ってたところだったし。それで、どうしたの? アクセ作りのことだよね?』
「あ、はい。実はアクセサリーに使いたい花を見つけたんですけど……」
『お、そうなんだ? でも、なんだか歯切れが悪いね? 問題がある感じ?』
「はい。実は……」
俺が使いたい花について告げると、リリィさんの納得しつつ、困ったような声が聞こえてくる。
『なるほどねー……開花時期が合わないのかー』
「やっぱり他の花にするしかないですよね……?」
『いや? まだ諦めるのは早いと思うよ』
「え? でも、開花時期がずれてたらどうしようもないんじゃ?」
調べたけど、花の開花時期は結構シビアだった。
だからこそ、諦めてせめて代替案でも思い付かないかという相談だったんだけど……。
『花っていうのは温度とか色んな条件で咲くのが早くなったり遅くなったりするんだよ。分かりやすく言うと、桜だって今年は例年より早く咲いた、遅く咲いたっていうのがあるじゃん』
「あ、た、確かに……」
『まあ、さすがに夏の花が冬に欲しいとかは無茶だけど。優陽クンのみたいにちょっとずれてるくらいならまだなんとかなる部類だよ』
「そ、そうなんですか……よかったぁ」
『とりあえずママに聞いてあったら取り寄せてもらうように話しておくよ。アタシも伝手を当たってみるから』
「はい! ありがとうございます!」
相手から見えないけど、俺は勢いよく頭を下げた。
それから、見つからなかった時用の代替案をいくつか確認して、リリィさんとの通話を終えた。
「……ふう。どうにかなりそうで本当によかった」
もし無理だと言われたら、時間がないのにまた1から考えないといけなくなっていたところだ。
残された時間的に考えて、そろそろ本格的にプレゼントの制作に入らないとまずかったので、ひとまずは一安心って感じかな。
まだ探している花が見つかったわけじゃないし、完全に安心は出来ないけど。
「よしっ。練習しよっと」
俺は軽く気合いを入れ、リリィさんから教えてもらった家でも出来るアクセ制作に取り掛かるのだった。
それから、あっという間に時間は経過し、期末テストも無事に終わった直後の休日。
「……あの、乃愛さん」
「ん。なに?」
「そろそろ説明してほしいんだけどさ」
流れていく景色を目で追いながら、俺はそろそろ現実に向き合おうと口を開き、
「なんで俺、いきなり車に乗せられて連行されてるの?」
俺は分かりやすく機嫌良さそうに鼻歌を口ずさんでいる乃愛にそう切り出した。
***
あとがきです。
まずは今回はかなり短めです。
理由は次回の話の都合上、ここが切りがいい部分で、このまま続けたら文字数がかなり増えそうだったからです。
それから、この作品の累計PVが40万を超えました!
本当にありがとうございます!
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まだまだ実力不足でマイペースではありますが、これからも書籍化という目標を目指して頑張っていきますので、
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