第141話
◆
「那奈さん、そろそろ病院へ行く時間ですから準備を手伝いますね」
「もうそんな時間なのね。じゃあ、
1人で着替えるよりは手伝ってもらった方が早いし着崩れても直してもらえるので申し出てもらった言葉に甘えて手伝ってもらうことにした。
奇妙な縁で、今は私たち家族を滅茶苦茶にした
母はノイローゼになってしまい実家で祖父母に面倒を見てもらっていて、父は伝手でベトナムの日系企業の責任者として働くことになり日本を離れ、弟の
月初に
そして、凪沙さんのことが気になり連絡を取る様にしたら日に日に衰弱していく様に感じられ、直接うちまで来てもらったら
その状況が不安になって児童相談所と警察に相談し、養育者として私が面倒を見ることを凪沙さんの両親に承諾させて、ふたりでの生活を始めたばかりになる。
親戚や昔から交友関係を持っている人にも当たってもらっていたけど、札付きの問題児の凪沙さんを引き取っても良いという人はおらず、放っておけないという気持ちだった私が引き取ったと言う経緯がある。
一緒に暮らすようになって見えてきたけど、凪沙さんは地頭が良いから全てを言わなくても判断することができる反面、人の気持ちと言った感情の機微については価値観が歪んでいる様に思うところがある。家庭環境がそうさせたのだと思うし、そういう意味では彼女も被害者なのだと思う。
当然、隆史にしたことのせいで私の家族が滅茶苦茶にされたことは恨めしく思う気持ちがあるけど、その矛先は凪沙さん本人から両親へ移っている。
◆二之宮凪沙 視点◆
先日から那奈さんのアパートでふたり暮らしを始めた。
事の発端は冬樹と面会した日、文字通り顔を合わせただけで帰られてしまったことを気の毒に思ってくれたらしい那奈さんと話をし連絡先のやり取りをしていた。
何かと気に掛けてくれて私の様子に問題があると判断して気が付いたら那奈さんが私の養育者となってお世話になることになっていた。
那奈さんに拠ると両親は私に対して虐待を行っていて、公的にもそれを認められる状況だったとのことだった。ひどい親だとは思っていたけど、私にとっては日常だったのでそれが世間から問題視されるほどのものであると言う認識まではしてなかった。高校を中退していて、年齢的にももうすぐ18歳という状況で受け入れられる保護施設がないらしく、親戚や両親の友人に当たっても敬遠され那奈さんが名乗りを上げて引き取ってくれたと言う状況になる。
那奈さんは両親とは全然違って些細なことでも気にしてくれ、都度困ったことがないかとか不満はないかと問いかけてくれる。生まれて初めての経験で戸惑うことも多いけど、嫌な気持ちにはならない。
面倒見の良さは元の職場でも発揮していたようで、元の職場の人から電話で相談を受けたりしているのを見掛けるし、その様子から1度や2度のことではなく何度も行われていることだと察せられる。
そして、元婚約者や
元婚約者の方には憎まれているのを感じるけど甘受するしかない。私が余計なことをしなかったら結婚をしていたわけだし、他の事も含めて思うところがあるのはあって然るべきなのは理解している。
また、
そもそも、特別教室に通う生徒は私のせいで暴走した隆史の友人や部活仲間の被害者なので、私が行動しなければ存在しなかったものだ・・・今になって思えば愚かなことをしたとわかるけど、あの時は正しいことをしていると思っていた。その事を那奈さんに話した時には悲しげな表情で否定もせずただ聞いてくれていたけど、どんな事を思ったのかいつか聞けたらと思う。
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