第41話

神坂冬樹かみさかふゆき 視点◆


法律研究部こうじつの部室は使わない時は施錠することになっているので、美波みなみ二之宮にのみやさんに声を掛け1人で職員室へ寄り鍵を借りてから部室へ向かうと、美波と二之宮さんの他に姉さんとハルが部室の前で待ってた・・・集合する様に呼びかけていなかったのだけど・・・



ご飯を食べつつ午前中に得られた情報の共有をすると、姉さんが仲村なかむら先輩とアポが取れ、今日の放課後に時間をもらえたとのことで、部室に来てもらうことで話を進めてもらうことにした。


美波とハルは学年が違うこともありまだ芳川よしかわさんには接触できていないけど、このあと昼休み中に会いに行ってくれるとのことだ。二之宮さんは鷺ノ宮さぎのみやにメッセージを送ったがまだ返信がないとのことで、返答があったら内輪のグループにメッセージを共有してもらうことになった。



それぞれが食べ終わると美波とハルは芳川さんの教室へ行くために退出し、姉さんも生徒会室で部の承認に必要な手続きを進めるために出ていったため、二之宮さんと二人きりになってしまった。


ここ数日ずっとそうなのだがけど、とにかくやたらと絡んでくる。高梨たかなし先生や美晴みはる姉さんも言っていた事だけど、何を考えているのかもわからないし不気味ですらあるので、一人で考えたいからと言い、少し渋られもしたが押し切って出ていってもらった。




昼休み明けの授業が始まる時間になっても二之宮さんは教室へ戻ってこなかった。今までサボる様なことがなかったので引っ掛かったが、授業の途中で戻ってきた際に生徒指導担当の大塚おおつか教諭と面談していたからとの申告をしていたので、それなら居なくても不思議がなかったと思った。




放課後になり部室に集まると、姉さんに連れてこられた仲村先輩も居て話を聞かせてもらった。



仲村先輩から聞いた話をまとめると、先輩がフットサル部の所属で鷺ノ宮さぎのみやが入学してすぐにサッカー部へ入部した頃から鷺ノ宮との交流があり、ずっと好きでいて去年の秋に1度告白をしたものの断られてしまっていたとのことで、それでも諦められずに思いを燻ぶらせていた中で例の事件が起きて鷺ノ宮が注目を浴びたため、他の人と付き合ってしまうかもしれないと危惧し再度告白をしたらOKしてもらえたという。でも、付き合い始めるとそれまでの鷺ノ宮と違って性急に性交をしたがったり更には他の仲間にも差し出す真似をする様になったけれども、それでも好きだったので我慢して嫌なことでも基本的にしたがって前の鷺ノ宮に戻ってくれるのを願っていたとのことだった。


まだ鷺ノ宮を見捨てられないので鷺ノ宮に不利になるような事には協力できないと協調して対応することには断られた。鷺ノ宮たちに撮られた映像や画像が鷺ノ宮たちから流出してしまったとしても、それは甘んじて受け入れ諦めるとのことだった。ただ、被害者の気持ちはわかるので他の女子生徒が鷺ノ宮を訴えたり通報することは止めないし、それで鷺ノ宮が不利な立場に追いやられても恨まないとの意向も確認した。



事件で陥れられるまで鷺ノ宮のことを気にしたことがなかったので、仲村先輩の語る以前の鷺ノ宮の人物像が俺が最近見聞きしてきた人物像と掛け離れていて、いくら好きな人へのバイアスがかかっているにしても整合性が取れない違和感が残った。そもそも仲村先輩は最近の鷺ノ宮は以前と違うと言っているので、事件の前後で性格が変わっているのは間違いなさそうだと思う。では『いつ』『どうして』変わってしまったのかという疑問が残るが、今は優先すべきことが多いので後回しにすることにしようと思う。



話が終わった仲村先輩が部室を去って少ししてから高梨先生がやってきて、新しい情報を共有してくれた。




鷺ノ宮を含む11名へ対し、自主退学の勧告をすることが決まったとのことだった。


鷺ノ宮はわかる。警察に対して問題の映像を提出したから、その情報が学校へ共有されたのだろうが、他の連中については俺からは触れておらず、先週の鷺ノ宮逮捕と連動して二之宮さんが学校裏サイトに書き込んだ情報くらいしかなかったはず・・・だから、学校も正式な処分を下さなかったと思ったのだが・・・




・・・と思い、二之宮の方を見たら不気味な笑みを浮かべていた。



「二之宮さん、もしかして君が鷺ノ宮たちのことを学校へ報告したの?」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る