第40話

神坂冬樹かみさかふゆき 視点◆


3連休明けの火曜日、俺たち関係者は朝早めに登校し第2音楽室用の準備室へ集まった。


職員室に顔を出して来ていた高梨たかなし先生が鷺ノ宮さぎのみやについて情報を持ってきた。


鷺ノ宮は初犯であることなどが加味され保護観察を前提で手続きが進んでいるとのことで、学校側は鷺ノ宮やその仲間達へ対して暫定対応として一学期中の自主休校を提案し、全員が従う意向を示したため夏休み前に登校してくることはないとの事だった。事実関係をちゃんと調べた上で正式な処分を下す方針とのことだ。慎重なのは神坂冬樹冤罪で懲りたのだろう。



俺、高梨先生、美波みなみ、姉さん、ハル、二之宮にのみやさんが集まったところで校長室へ乗り込み、用意した「法律研究部へやをもらうこうじつ」の新規立ち上げの要望を出し、その場で先んじて空いている部屋を部室として使用する許可をもらい、近日中に書類を整え提出することで正式な部活として認められるとの内示をもらった。


その場で銀行アプリから学校への寄付を振込んだら校長が気持ち悪いくらいに媚びた声でお礼を言ってきたが、そんなのは些細な事だ。とは言え、これで今後も何かとやりやすくできそうだとは感じた。



校長室を退出し部室として使用する許可を得た部屋へ移動すると、使われていなくても清掃が行き届いているようできれいな状態だったので良かったと思いつつ、今日の動きを相談した。


姉さんに仲村なかむら先輩へ、美波とハルに芳川よしかわさんへ接触してもらい、可能であればこの新部室で話し合いの機会をもらうようにするのと、二之宮さんには鷺ノ宮へ連絡を取ってもらい後でその様子を共有してもらうと方針を決めてから、それぞれが自分の教室へと先生は職員室へ向かった。



美波と二之宮さんは同じクラスなので3人で一緒に移動していたのだが、美波はストレスで倒れたことが引っ掛かっているのか距離を開けようとするのに対して、二之宮さんがすぐ側に並びんできて、教室へ着くまでどうでも良いことでも話しかけられ続けて辟易した。


教室へ入るとクラスメイトがこちらへ注目し様子をうかがっていたが、大山おおやまさんが「おはよう」と話しかけてきて二之宮さんとの距離が離れたら男女混ざった何人かのクラスメイトに囲まれ、謝罪の様なことを言われた。


許す許さないというよりはどうでも良くなっていたので、おそらくうまく浮かべられていると思う愛想笑いで言質を取らせないようにしつつ気にしていないという感じで返していたら、周囲の人数が増えていった。


ただ、二之宮さんに絡まれるのよりは気が楽なのも確かなので、それで良かったと思うことにした。




始業時間になると塚田つかだ教諭が入ってきたが、いつになく機嫌が良さそうなのを見て、高梨先生から昨日学校で旦那さんと言い合いになっているところを塚田教諭に取りなしてもらって、その時の視線がどうのとか言っていたなと思い出した。こう言っては難だが、30代後半の独身男性で根暗っぽい感じだし、たまたま遭遇した高梨先生の夫婦の取りなしをしたことでポイントを稼げたと勘違いしているのではないかと思わなくもない。


本質的に取り立てて悪い人とは思わないけど、女性とのコミュニケーションがおかしそうと言われたらそれを感じてしまうのも事実だし、そもそもこの2ヶ月の俺に対する接し方が公平ではなかったのでその点においては好意的に思える要素がない。




休み時間になるたびクラスメイトに囲まれ愛想笑いを振りまく時間となり嫌気が差したが、ここで変に悪目立ちすると却って面倒になると思い我慢した・・・さすがに昼休みは新部室へ逃げ込んだけど。

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