第9話
◆
フユが
だから、幼なじみの
「
美波ちゃんがフユに尋ねたら驚くべき返答があった。
「ふたりとも落ち着いて聞いて欲しいんだけど、僕が二之宮さんの
「冬樹、最低だよ!」
「そうだよフユ!それは人として絶対にダメなことだよ!」
「冬樹のことを信じたかったけど、そんなんだったなんて!」
「ちょっと、美波、落ち着いてよ」
「これが落ち着いていられるわけ無いでしょ!」
「そうだよ、フユ!」
「二度とわたしに話しかけないで!」
「あたしにも話しかけないでね!お姉やパパママにもちゃんと言うから!」
後になって思えば、この時ちゃんとフユの話を聞いていなかった。
フユの口から出てきた衝撃的な内容で思考が吹き飛んでしまって、美波ちゃんとふたりで興奮し勢いで話を打ち切ってしまった。
そして、その冷静さを失ったまま『フユがクラスメイトの女子に襲いかかった』と家族に言ってしまったのが大きな間違いだった。
お姉もパパママもあたしがフユ本人から直接聞いたと言って話をしてしまったから、フユから直接話を聞かずに家族みんなの感情が荒れるままに暴言で批難し絶縁するとまで言ってしまった。
フユはろくに言い返すこともなく『お世話になりました。でも、話をちゃんと聞いて欲しかったです』と言ってその日の内に家を出ていってしまった。その後、ほぼ毎日登校しているから傷病なく過ごしているのはわかっていたけど、どうしているのかは家族の誰も知らなかった。
学校ではフユが二之宮さんに襲いかかったことが事実として広まっていき、しかも日に日にそれが事実として定着していった。
後になって考えれば双子のあたしや幼馴染みの美波ちゃんが事実として受け止めて振る舞っていたのだから、それを見ていた学校のみんなが事実だと思ってしまうのは当然のことで、それに気付かずみんなが事実だと思っているのだから事実なんだと思い込む悪循環に陥っていた。
また、鷺ノ宮も噂を広めるように動いていたのだと今ならわかる。
よくよく考えれば二之宮さんが襲われていたのが真実ならパパママが呼び出されフユは停学や退学などの処分を受けていたはずだけど、そんなこともなかったのだから学校が処分をしないだけの状況だったわけで、その事にだって気付くべきだったのだけど、あたしが気付いたのはしばらく経ってからだった。
フユが家を出ていってから家は雰囲気が重くなり、お姉は生徒会役員の仕事だと言っては帰宅が遅くなって、パパママは仕事をたくさん入れるようにしたのか留守が多くなっていたので家族で話をする時間は激減したし、また美波ちゃんもあたしと話すのが気まずいのか全く交流しなくなってしまった。
落ち着いたらフユが悪くないことは確信できていたし、早く仲直りがしたかった。あたしが強く否定した引け目があったので尻込みしてしまっていたけど、夏休みに入ったら1ヶ月以上姿を見ることすらできなくなることに思い至り、期末テストが終わったらちゃんと話をしてもらおうと思っていた。
そうしたら、フユを捕まえた鷺ノ宮が警察に捕まり二之宮さんが真実を語ってフユの疑いは晴れた。それはすごく嬉しいのだけど、タイミングとしては最悪だ。これから話をしてもらおうと思っていたのに、今話しかけても疑いが晴れたから手のひらを返した様にしか思えない。
更には美波ちゃんが鷺ノ宮にハメられて多くの男子生徒に辱められていたという事まで知り泣き出したくなった。
とは言え、どんなに悪い状況でもフユと話をしないわけにはいかないので、真実を知った翌朝フユのクラスまで行き話しかけたけど
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