第10話
◆
母がピアノ好きな人なので物心がついた頃にはピアノ教室へ通わされていて生活もピアノが中心にあり、高校時代までは常に次のコンクールを目標に生活し、将来もピアニストとして生きていきたいと思うくらいだった。
希望通り音大に進学できたけど、周囲のレベルの高さにピアニストとして生きて行くのが現実的ではないと感じ、音楽教師という進路を目指す事となった。
ピアノ一辺倒だったわたしだけど教職というのは性格に合っていて、教員免許取得の勉強も教育実習も取り組めば取り組むほど天職であるように思えたし、無事新卒で
わたしの人生が大きく変わったのは25歳の時に友人に紹介されて
悠一さんは出会った時から優しく気を使ってくれる人だったけど、結婚をすると同時にそれまで見せてこなかった
私にとって音楽教師は天職なので続けたかったし、それを理由に何度も口論になった。とは言え、夫婦仲は基本的に良好だったので結婚して1年が過ぎたあたりからわたしが30歳になる前にはこどもが欲しいという話になり、
わたしが30歳を過ぎたあたりから悠一さんはこどもを授からないのはわたしが悪いという気持ちを持ち始めたようで、言動の節々にその気持ちを乗せてくるようになってきて、気持ちがささくれることが多くなり、最近では悠一さんと肌を重ねるのもこどもを作るための作業という感じになっていて、したくないと思ってしまっている。更に悠一さんの家族である義父母や義兄姉も同じ様に考えているようで、顔を合わせるたびに小言を言われるようになり、最近は悠一さんの実家へ行くのが苦痛になっている。
仕事は充実しているけどプライベートは陰りがある。それがわたしの現状・・・
ゴールデンウィークが明けてすぐに秀優高校で事件が有った。2年の男子生徒がクラスメイトの女子に襲いかかったというもので、その加害者も被害者も加害者を捕まえた男子生徒も校内では知らない人がいないほどの有名な生徒だったので大きく騒がれた。被害に遭ったとされる
しかし、二之宮さんの応答には引っ掛かる点があり、最終的に話を聞いた校長先生・教頭先生・生徒指導の
事件から数日後の放課後、神坂君がボロボロになった教科書・ノートなどを抱えて歩いていたので声を掛けた。これが神坂君と初めて話をした瞬間だった。様子を見て察した通りクラスメイトからの嫌がらせで私物を破損させられたとのことだったので、
二之宮さんの不審な証言のことがあったし、神坂君は芸術選択科目で音楽を取っていないため接点がなかったので人柄もわからなかったから最初のうちは警戒していたけど、話す内にすごく魅力的な生徒だということがわかったし、二之宮さんの言っていたことはほとんど事実で、鷺ノ宮君が自分よりも人気者の神坂君を陥れるために弱みを握っている二之宮さんに無理やり被害者役をやらせたらしいということを知った。
鷺ノ宮君は音楽の授業を取っていたので知っていて常に明るく振る舞うクラスの中心にいる好青年という印象だったけど、裏では悪いことをしているようで残念な思いをした。
それにしても神坂君はすごくて、どこからか鷺ノ宮君が悪いことをしている映像を入手していて、影で同級生や後輩に暴力を振るったり脅迫している証拠を手に入れていた。見せてもらった動画はほんの一部らしく、神坂君が言うにはわたしには見せられない程ひどいものもあるとのことだった。その中に二之宮さんが逆らえなかった理由もあるのだろうと察せたけど、真実を知るのが怖かったのもあり目を背けてしまい深く聞くことができずにいた。
神坂君は鷺ノ宮君に対しては憎悪の感情をむき出しにしていたのだけど、それ以外については穏やかで陽だまりのような人柄を感じさせたし、わたしに対しては全力で好意を向けてくれて嬉しくもあり恥ずかしくもあった。
プライベートが充実していない日々の中で
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます