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 とある資産家のだだっ広い地下室にあるのは、濁った水槽とそれに刺さった無数のチューブだった。水槽の中には腐乱臭を放つ溶けた何かと、それに刺さった生き生きと白く輝くユリの花があった。

 溶けたものがもとは何なのかは誰も覚えていない。誰も調べようともしない。

 もう既にこの星に人間はいない。人間がここから消えてから、まだそれほど長いときは経っていない。こことは地球である。見渡す限りに乱立した鉄の柱はまだ新しい。淀んだ赤色の空の下、黒い虫がいたるところを走り回っていた。

 空を流れ星が駆けていく。ただしこれは人類の残した罪である。

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乖離4032 ちょうわ @awano_u_awawa

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