最終話 召喚士ルイは友と共に歩き出す

 フラーテッド家四男の誘拐事件から半年後。

 あれからルイは王都の魔法学校に入学する為、着々と準備を進めていた。


 入学資格を得られるのは十二歳からだが、試験に合格しなければならない。その為にルイは、この半年間の全てを魔法の訓練にあてていた。

 師匠となったのはフェルだったが、あの事件でルイの魔法の才能が芽吹いたのだろう。相変わらず使えるのは召喚魔法だけだったが、彼女と出会った当初よりも上達していた。


 それと並行して、新たに従者見習いとして伯爵家に住み込みで働き始めたジェイだが……彼はこの半年間、朝から晩までフェルに徹底的に鍛え抜かれる日々を送っていた。

 ジェイは元々ガッシリとした体格ではあったが、従者としてだけではなく、護衛としても役立てるように戦闘訓練もさせられていた。成長期というのもあって、この半年間で見違えるように凛々しくなっていたのだ。

 フェルから言わせればまだまだ未熟ではあるのだが、簡単にはへこたれない。時に遠方から送られてくる母からの手紙に励まされながら、ジェイは友の期待と信頼を裏切らない為に奮闘している。



 そして今日、いよいよルイが王都に旅立つ日がやって来た。




 お金で買える友達は、本当の友達じゃない。


 そんな事は、頭では分かっていた。

 けれどもルイ・フォン・フラーテッドという十歳の少年にとって、という事は、自分の身を守る唯一の手段でしかなかったのだ。


「ルイ様、そろそろ出立のお時間です」

「は、はいっ! すぐに行きます!」


 けれども今は、本当の意味で『友達』だと呼べる人が側に居る。


「忘れ物は……ええ、特に無いようですね」

「えへへ……そうだと良いんですけど」

「世界最高峰の美貌と実力を兼ね備えたメイドであるこの私が言うのですから、間違いなど欠片もあるはずがございません」


 そして、いつでも自分の味方で居てくれる最強で最高のメイドがついている。


「よし、それじゃあ……」

「ええ、参りましょうか」


 若き召喚士は、白く滑らかなメイドの手を取り、彼女もまたその手を握り返した。


 自分を大切に想ってくれる人達を護れる力を得る為に……精霊王だった頃の力を、いつの日か役立てる時が来ると信じて──!


「……うん。行こう、フェルさん! ジェイ!」





 END

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召喚士ルイは友を喚ぶ 〜最弱精霊しか召喚出来ない貴族の四男の僕ですが、実は四大精霊を従える【精霊王】の生まれ変わりだったらしいです〜 由岐 @yuki3dayo

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