エピローグ
エピローグ
「お待たせしました……」
「おっ、きたきた! いっただきまーす!」
タイヘイは目の前に並べられた料理を勢いよく食べ始める。
「す、すごい食べっぷりですね……」
タイヘイの隣に座るモリコが戸惑いを見せる。タイヘイが答える。
「そりゃあもう、すっげえ腹減ってたからな!」
「随分と激闘だったみたいだね?」
「ああ、あいつは強かったな! まさに超人だったぜ!」
モリコの横に座るクトラの問いにタイヘイが食べながら答える。
「食べるかしゃべるかどっちかにしなって……」
モリコたちとは反対側に座るパイスーが呆れる。
「え? なんだって⁉」
「だから! ああ、口からなんか飛んだよ⁉」
パイスーが嫌そうな顔になる。
「おい……もっと行儀よく食事出来ないのか? ここは王宮なのだぞ?」
タイヘイたちと向かい合って座るシモツキが顔をしかめる。
「良いのです、シモツキ……」
「し、しかしですね……」
「この国を救ってくれた大恩人たちです。この場は無礼講と行きましょう……」
「おっ、それならもっと酒をもらえるかな?」
カンナの言葉にクトラがグラスを片手に持つ。
「ええ、構いません。この国でも一番上等なお酒をたくさん用意させましょう」
「おおっ、やったね♪」
「……飲酒運転になるんじゃないのかい?」
ヤヨイが笑みを浮かべながら尋ねる。
「普通に歩く分にはなんら問題ないよ」
「ははっ、そりゃあそうか……」
「お酒で思い出しましたが、フンミらをお許しになるようですね?」
モリコがカンナに対して問う。代わりにキサラギが答える。
「……なにか文句でもあるのか?」
「いいえ、ただ随分と寛大なご処置だなと……」
「もちろん、全くの不問というわけには参りませんが、彼らの高い能力はこの国にとって必要なものですから……」
「ふむ……」
「例えば、ムツキの政務を司る力はやはり必要不可欠ですし、ワスやウヅキにもそれを補助して欲しいと思っています……」
「なるほど……」
カンナの答えにモリコが頷く。
「さらに付け加えて言えば……」
「さらに?」
パイスーが首を傾げる。
「フンミの高い戦闘力もやはり惜しいです。ミナについてもそれは同様です。ただ牢屋に閉じ込めておく方が我が国にとって損失だと考えております。もちろん、目を光らせておかなければなりませんが……文官たちに対してはシモツキ、武官たちに対してはヤヨイに用心してもらおうと思います。キサラギには、一歩引いた位置から全体を見てもらえばなと……」
「……御意」
「任せといてくださいよ」
「精一杯務めます!」
キサラギが頭を下げ、ヤヨイとシモツキがそれぞれ力強く頷く。クトラが尋ねる。
「……あのケンタウロス娘とかはどうなるの?」
「サツキ、ナガツキ、ハヅキらも、これまで通りに働いてもらいます。貴重な戦力ですからね」
「戦力ね……まだ戦うんだ?」
「無論です。妖の国はこちらに色々と仕掛けてきています。南の『亜人連合』もなにやらきな臭いですし……『愛の国』と名乗っておりますが、残念ながら愛だけで平和は保てません」
「はっ、なんとも勇ましいことだ……」
クトラが注がれた酒を口にする。カンナが続ける。
「ただ、当面は国の立て直しと言いますか、体勢の見直しが急務なのですが……」
「……国王陛下もご無事でなによりです」
「ありがとう。それは本当に良かったです……」
モリコの言葉にカンナは笑みを浮かべる。
「ごちそうさん!」
「早っ⁉ あれだけの量をあっという間に……」
食事を終えたタイヘイにパイスーが驚く。タイヘイが腹をさすりながら、カンナに問いかける。
「姫さまよ……俺たちとの同盟関係っていうのは維持されるんだよな?」
「もちろん……タイヘイ殿たちに危機があれば、わたくしだけでも駆け付けます……!」
「そうか……それじゃあ、この辺でお暇するわ……」
「あ、も、もう行かれてしまうのですか? もうちょっとゆっくりなさっても……」
立ち上がって歩き出したタイヘイの背中をカンナは切なそうに見つめる。タイヘイは振り返って、笑みを浮かべながら告げる。
「ああ、大事な『俺らの国』に戻らなきゃいけないからな!」
~第一章完~
※(23年8月1日現在)
これで第一章が終了になります。第二章以降の構想もあるので、再開の際はまたよろしくお願いします。
【第一章完】四国?五国で良いんじゃね? 阿弥陀乃トンマージ @amidanotonmaji
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