第4話: びっくり
帰り道を一人歩く。
あんなことをしてしまって、自己嫌悪と後悔で消えてしまいそうだ。
いや、なら最初っからあんなことしなければよかったのにっていう話なんですけど。感情に歯止めが効かなくなる時ってあるよね。それがどれだけ小さなことでも。
「あれ、透くんだよね…?」
なんてどうでもいいことを考えていたら、後ろからよく聞いたことのある声が聞こえてきた。…めんどくさ。
振り向かなくとも分かる。声の主は、小学校、中学校と仲の良かった幼馴染である、夕霧 真美だ。
…昔の知り合いと話したくなんてないんだけどな。
仕方ないか、どうせ少し話すだけだ。
「よっ、久しぶりだな」
振り向いて、努めて明るく返事をすると、彼女もたちまち笑顔になった。
「あ、やっぱり透くんだよね!よかった…、雰囲気違うからもしかして違うのかと思っちゃった」
「そんなに俺、変わって見えたのか?」
「そうだよ!透くんはもっと、キラキラで眩しいオーラをばあっと全身から出してたじゃん」
「はは、なんだそれ」
そうだった。俺は、そんな俺だった。
「いまは何してるの?」
「あ~、今帰りだけど」
そう言うと、彼女は期待を顔に浮かべて近寄ってくる。
「じゃあさ、久しぶりに遊びに行こうよ」
きっと俺ならその誘いを断らないだろう。たとえどこに行くとしても。
「もちろん行くよ」
「やったっ!」
彼女、真美は本当にうれしそうな顔をしてガッツポーズをする。
行く場所も何も聞いていないが…、どうなるんだ?これがなんかサン〇オピュー〇ランドとかだったら全然話は別だけど。もちろん行かない方向で。
「あのね、二人で行きたいところがあるんだよね」
「どこなんだ?」
「それはついてからのお楽しみで」
なるほど、一番困るやつだな。…でも行かざるを得ないが。
彼女は俺の手を引いて、俺の家とは反対方向に走り始めた。
■◇■
「ここだよ、来たかったのは」
俺たちがきたのは、小さなころ二人でよく遊んだ公園だった。
「なんでまた、こんなところに俺を連れてきたんだ?」
「ふふ、それはね…」
真美は公園のベンチに座り、背もたれを手でなでながら顔を背ける。
「実はね、結構前からあそこで透くんのことはよく見かけてたの」
彼女は顔を背けたまま話し続ける。
「でね、いつも元気なさそうな顔してたからさ、話しかけるかどうか迷っちゃって。今日は勇気出して話しかけてみたの。そしたらいつもの透くんでさ、安心したっていうか…、わかんなくなっちゃって」
真美は、今度はしっかりと俺の目を見て、言った。
「だから、教えてほしいの。透くんがどんな人なのか。だって、透くんのことが…ずっと好きだったからっ」
どうやら先輩は僕のことを無条件で愛してくれるらしい。 さけしゃけ @Writer_Fish
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