10月25日 マンデリン、壺焼きカレー

 寝ても寝ても眠い日だったが、今日は友人と会う約束がある。身支度をして、約束していたカフェへ向かった。「珈琲、抹茶、紅茶ならどれば良いか」と尋ねて「珈琲」と返ってきたので、以前この日記にも書いた美味しい店を選んだ。(https://kakuyomu.jp/works/16817330654745085719/episodes/16817330659479004629


 故郷広島で過ごした中高六年間の中で、最も親しかった友人である。何度か同じクラスにもなったし、何より青春のほとんどを注ぎ込んだ部活が一緒で、楽しいことも辛いことも一緒に経験してきた。大学は私が東京へ、彼女は広島で進学したため距離は離れたが、会えばいつでもあの頃の関係に戻れる、貴重な相手である。

 私が山陰でじっとりカビが生えそうになっているのを度々ショートメッセージで愚痴ったためか、夫婦で旅行がてら島根まで来てくれたのだった。実にありがたい。彼女のご主人もなかなか面白そうな人で、一度じっくり話してみたいと思っていた。

 私はシングルオリジンのメニューから、今日はマンデリンを選んだ。美しいカップにたっぷりと注がれた琥珀色。深煎りのコク深い苦味と、マンデリン特有の爽やかな香りが、やはり美味しい。

 話は弾みに弾んだ。互いの近況は勿論、広島や山陰の話題や音楽の話も。尽きないものである。気づけば三時間近く経ってしまっていた。久しぶりに夫以外の人と対面で話すことができて、本当に良かった。


 日が傾いてきた頃、一人になると楽しく喋り過ぎた疲れと寂しさがどっとやってくる。この後買い物と料理と、とやるには遅い時間になってしまったので、夕飯は夫と待ち合わせて外で食べることにした。

 今夜は久しぶりに、『壺焼きカレー亀屯キートン』へ行った。これが実は、広島の本店から暖簾分けした店なのである。この店を松江で見つけたときにはたいそう驚いた。

 壺焼きカレーというのは何かというと、大鍋に作ったカレールゥを「つぼ」と呼ばれる小さな鉄の小鍋で一人分ずつ温めて提供することから、その名がついている。これをターメリックライスにかけながら食べるのだが、鉄のつぼでグツグツと煮えたルゥは、食べ終わるまでしっかりと温かい。「大鍋に仕込まれるカレーは、開店時と閉店時では濃度にもコクにも違いが出てしまう。いつ食べても濃度もコクも同じ味を提供できないか」というところから生まれたそうである。

 トッピングは色々あるが、私が最も気に入っているのは「地中海」というもの。何がどう地中海かと言えば、海老・イカ・ホタテ・ムール貝をカレールゥと共につぼで煮込んだメニューである。具沢山な上、魚介の旨味がルゥにしっかりと溶けて実に美味しいのだ。ターメリックライスにはガーリック風味でカリッカリのフライドオニオンが乗り、ここまでカリカリならば私にも食べられるし、カレーにもよく合う。夫の大山豚ヒレカツも大変美味しかった。


 友人にもらったお土産を開けてみると、多種多様な各社のもみじ饅頭が入っていた。しばらくおやつには困らなさそうである。何から何までありがたいことである。

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