10月20日 牛肉と大根の炒めものと、豆苗とエリンギのナムル

 朝から天気は大荒れで、私の体調も絶不調である。

 昨日までとは全く違う辛さがあったので、やはり天気の影響は大きい。困ったことである。

 しかし昨日に引き続き、解凍した牛肉がある。育てていた豆苗も食べ時である。つくらねば、ならない。


 豆苗は、根を水に浸せば再度収穫できると、知ってはいた。しかし毎日水を替えることすら達成できるか不安なレベルのズボラである。そしてそもそも、そこまで豆苗の味が好きではなかった。そのためスーパーで自ら買うことは無かったし、ミールキットに入っていても再生栽培を試みることはこれまで無かったのだった。

 しかし、近頃は食材が何もかも高騰している。一度くらいはやってみようではないかと思い立ったのが、一週間ほど前だった。

 そして存外、すくすくと育った。再生栽培を決意したのが考え無しにじょっきり切ってしまった後なものだから、脇芽の無いところもままあったのだが、なかなかしっかり伸びてくれた。昨日までは天気が良かったおかげかもしれない。毎晩飲む薬と合わせることで、なんとか水替えも成功した。

 よしよし、美味しく食べてやるからね、と本日ざっくり刈り取った。冷凍していたエリンギとレンジにかけて、至極簡単なナムルにした。二度目のせいか特有の青臭さが薄まり、それでいてシャキシャキとした食感はちゃんとあるので、なかなか良い。醤油とごま油をベースにした濃いめの味付けと、エリンギの旨味もしっかり吸っている。

 二度目の豆苗の方がむしろ好きかもしれない、などと思った。


 さて、では今夜の主菜はというと、「牛肉の大根の炒めもの」である。ストックしていたリストから、土井善晴先生のレシピである。

 昨日も使った牛肉の切り落とし、実はこれがふるさと納税の返礼でもらった佐賀牛なのだが、クリームで煮ると肉の味が思いの外ぼやけてしまって、佐賀牛らしさというものをあまり味わえなかった。ビーフストロガノフはしみじみ思い出すほどに美味しかったし、それは佐賀牛の旨味が溶け込んでいるからだろうとも思うのだが、より佐賀牛そのものの味を感じたい。そこで取り出したレシピである。

 牛肉は食べやすい大きさに切り、醤油・砂糖・胡椒を揉み込んで下味をつける。切り落としなので大きさも様々だが、美しいサシが見えて期待が高まる。

 大根は3ミリほどの厚さの半月切り、またはいちょう切りにして、両面をじっくり焼きつける。下茹ではせずに食感を残しつつ、ここでしっかりと甘みを引き出しておいて、一度取り出す。

 牛肉を色が変わるまでさっと炒めたら、大根を戻し入れて胡椒を振り、炒め合わせる。そのうちに牛肉についていた下味が大根に絡み、茶色く甘辛い色が染みていく。これで完成である。


 これもまた、非常に工程が潔い。下味の段階でほとんどの味付けが終わっていて、それ故に素材の味をしっかり楽しめる。

 佐賀牛は流石に、うまい。問答無用の旨さがある。切り落としで筋が無いわけではないが、肉質は柔らかく、脂はほどよく、噛み締めるほどに溢れる旨味がたまらない。そんな肉汁を透き通った大根がたっぷりと吸い込んで、これまたうまい。シャキシャキとほっくりの間くらいの、ちょうど良い歯応えの中に、大根そのものの甘さと肉の旨味と甘辛さを含んで、大根だけを食べても肉と共に頬張っても美味しい。そしてこれを更に華やかな味わいにしてくれるのは、やはりカンボジアの胡椒(https://kakuyomu.jp/works/16817330654745085719/episodes/16817330655415069602)である。この香りはやはり何物にも変え難く、とりわけ肉の味を引き出してくれる。


 体調が低空飛行ながら作って良かったと心から思える夕食になった。土日は大人しくしていようと思う。

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