4月5日 カンボジアの胡椒
今日は意を決して、新聞を読んだ。
別に大事な記事があったわけではない。ただ結構な日数分を積んでしまっていたのである。
新聞の積ん読。やっていいはずがない。情報は鮮度が大事に決まっている。積んでいる間にあらゆる意味で古い紙束と化してしまう。駄目人間のすることである。
どうも最近、活字を読む気力が失せている。それと呼応するように、小説も書けなくなっている。書きたい気持ちはある。しかしこの手が虚構に届かない。日記に関しては、ほとんど考えずに書いているので続けられている。いにしえのブログやらmixi日記やらTumblrやらをやっていた頃からの手グセである。もっとも、それらは途中で放置してしまってインターネット上のデブリと化してしまっているのだが。
それはさておき新聞である。
我が家では山陰中央新報を取っている。島根県内ではなんと六割以上のシェアを占めるという地方紙である。
越してきた当初は東京から引き続いて某大手紙を取っていたのだが、やはり住んでいる場所に関係のない話ばかりを読むのはなかなかに虚しく、挟まるチラシも少ないので切り替えたのだった。
結果、とても良かったと思っている。この土地にどんな人が住み、何を大事にし、何が問題になっているのか。そういったことが非常によくわかる紙面づくりがされている。地方紙によくあるほっこり動物ニュースなどももちろんあるのだが、新名物や新商品を都会に売り出そうとする試みや、地元政治家の動きなどもしっかり報じてくれる。極端な思想の偏りなどを感じないのも良い。
島根に特徴的な記事といえば、神事に関することではないかと思う。出雲大社をはじめ、古い社が数多くある県内では、毎日のように何かしらの神事が記事になる。珍しい儀式や習わしは興味深く、神在月には特に紙面が賑やかになる。その辺りは、今年の神在月までこの日記が続いていればもう少し書いてみたい。ともあれ、こうした独特の空気感は、ただ暮らしているだけでも、ネットニュースを見ているだけでもわからなかっただろうと思うのだ。
というわけで、山陰中央新報のことは結構気に入っているのだが、いざ広げるとじっくり読んでしまってなかなか進まず、そしてまぁまぁ疲れてしまうものだから、「後でゆっくり読もう」と思いながら一日が終わり、「しまった、古いのから読まなければ」と思いつつまた次の日の新聞が積まれ、とうとう雪崩を起こした、という情けない話なのだった。
積まれた山の下の方は、取り急ぎチラシと連載小説などにざっと目を通しただけで回収に出す古紙としてまとめ、直近数日分だけをじっくりと読んだ。
島根はもうすぐ県知事選である。この衰退しつつある土地で政治をやろうとする人間の少なさに、納得と諦めの気持ちがぼんやりと湧いてくる。
今夜はまた期限の近いミールキットで焼きそばを作った。焼き目がつくまで固く焼いた中華そばの上に、チンジャオロース風に味付けした豚肉と野菜の餡をかけたものである。
中華シェフとのコラボメニューで美味しかったのだが、もう少し味を引き締めたくて、レシピ外だが黒胡椒を振ってみた。これが大正解だった。
我が家の黒胡椒は、カンボジア産のものである。以前カンボジアに出張した夫に土産は何が良いか尋ねられ、色々調べてみたところ、カンボジアの胡椒は世界最高峰の品質だというのを知り、ひとつ買ってきてもらったのだった。現地では安価だったという。
これが凄いのだ。胡椒で感動したのは、これが初めてだった。それまでも一応ミルで胡椒の粒を挽いていたのだが、味も香りも段違いなのである。
しっかりと辛味はあるが尖ったキツさは無く、この上なくフルーティーな香り。どんなものに合わせても、その風味を格上げさせる力がある。黒胡椒炒めなども最高に美味しい。
今回はチンジャオロース風の餡炒めの上にしっかりと。カリカリと香ばしい固焼きそばとの一体感が上がり、とても良い味になった。
この胡椒もそろそろ無くなってしまうので、ネット通販ができるところを探そうと思う。この香りを知ってしまうと、もう他の胡椒には戻れない。
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