五月
5月1日 鯖の梅はちみつ照り焼き
昨日積極的に活動した反動もあり、今日は夫婦でだらだらとしていた。
我が夫、明日は出勤だが今日は休みなのである。
月初めなので、様々なメールマガジンが届いていた。東京の飲食店や映画館など。昨年はそれを見るたびに唇を噛みしめるような思いをしていたが、今では心に虚無が広がるばかりである。
解除しないのか、という疑問を持たれるかもしれないが、予定では、来年度は東京に戻ることになっているのだ。だからこそ、私は山陰での暮らしをどうにか耐えられている。一年後の希望に縋って生きている。そうでなければきっと、絶望に呑まれていただろう。
昨日は山陰の良いところばかりを巡ることができたので、日記にも素直にそれを書いた。山陰の全てが嫌いなわけではない。ただどうしても、私がずっと暮らしていくには合わないことが多過ぎるのだ。
だからまだ、東京の店のメルマガも解除しない。見れば辛くもなるが、それは希望の旗でもあるのだから。
ゆっくりと起きて、昨日買った『ル コションドール出西』のパンを食べた。
ハムチーズやクロワッサンはリベイクして、あんバターやベリー系のブリオッシュはそのままで。見た目よりも少し地味な味わいではあったが、なかなかに美味しかった。
夜には遂に、梅干しとの最終決戦となる。
塩分濃度5%の梅干しのため、あまり保存がきかないのである。だから勝手ながら、今日で決着をつけさせてもらう。
そのための食材は、イサキにしようと決めていた。イサキにまつわる喜ばしいことがあったものだから、それを祝してと考えていたのだが……大変な残念なことに、先週は見かけていたはずのイサキが、今日は周辺のスーパーに一尾も入っていなかった。ままならないものである。
しかし折角なので魚にしようと、安くなっていた鯖を使うことにする。
今夜は締めくくりにふさわしく、梅尽くしである。
まずは「エノキの梅ポン酢和え」。
食べやすい大きさに切ったエノキを酒蒸しした後、たたいた梅干し、ポン酢、鰹節と和えたものである。今日の献立の中では最も梅干しそのものの味を感じる一品。酒蒸しのエノキはまろやかで、鰹節の旨味と混じりあうポン酢の中にほんのりと梅干しの甘さがあり、ごはんの進む味である。
もう一品は先日作り置いた「切り干し大根の梅煮」。梅のほどよいさっぱり感はそのままに、数日置いて味が落ち着き、深みのある味わいになった。
主菜は「鯖の梅はちみつ照り焼き」。
片栗粉をまぶした鯖の切り身を両面こんがりと焼き、たたいた梅干しを混ぜ混んだはちみつ照り焼きダレを煮詰めながら絡めた。表面はカリっと、中はふっくらジューシーに焼き上がった鯖に、甘辛いタレがとてもよく合う。甘めの照り焼きダレに梅の果肉が穏やかな酸味を加え、大葉と口に含めば後味も爽やか。
これを以て、梅干しとの長きにわたる戦いは終わった。終わるしかなかった。開戦時(https://kakuyomu.jp/works/16817330654745085719/episodes/16817330656115488684)にも書いたが、あまりにも食べるのが億劫で二ヶ月ほど見ないふりをしていたため、もう賞味期限が来てしまったのだ。申し訳ない。それでもどうにか、1キロのうち半分以上は食べたはずである。
さようなら、梅干し。ありがとう梅干し。新しいレシピとの出会いは興味深かった。しかしもうしばらくは会いたくない。思い出の中でじっとしていてくれ。
皆様はくれぐれも、「梅干しが好きだ」と公言していない相手に1キロの梅干しを贈るようなことは絶対にしないでいただきたい。我々夫婦のような犠牲者を生まないために。
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