都市伝説は、まさに都市生活のなかで生まれる。都市生活での不安や恐怖を具体化したものこそ都市伝説の怪異といえる。
そんな怪異たちはイノセントでピュアな存在として世界に現れ、怪異としての本分を果たそうとするのだが、高度に都市化された女性たち相手にすっかり後れを取ってしまう。
第一夜「ベッドの下男」では、怪異という目の前に迫った恐怖ですらマヒするほどにただれた精神状態の女性が、パートナー役となる。「ベッドの下男」は怪異である自分が怪異でなくなってしまうことを恐れながらも女性にひかれていき、女性は女性で怪異と交流を重ねるうちに成長していく。
この交流が浮かび上がらせるのは、都市生活の情景である。軽妙なタッチで描かれるこの奇妙な恋愛模様は、時に恐ろしく、時に寂しく、時に孤独だが、最後には温かい。本作は都市生活に生きる我々への癒しの物語なのである。