何者でもない「あなた」の影響力と化学反応について

尾岡れき@猫部

何者でもない「あなた」の影響力と化学反応について


若者の自殺が増えた。こんなワードが珍しくなくなってきました。

これって、麻痺に近いんじゃなかろうか。無関心になってないか。そんなことを思っていた矢先、Twitterを眺めていたら、こんなツイートが飛び込んできました。


「足を切断することになりました」

若い方です。

要約すると、この方は自殺を試みた。奇跡的に助かるも半身不随。そこから循環障害をおこし、下腿が壊疽。切断の必要が生じたというのです。


それほどまでに追い詰められていたとは。

子をもつ親として、身につまされる想いです。


でも、これって思春期だけの感情なんだろうか。そんなことを考えました


今はだいぶ薄れた気もするけれど、自分が何者――というよりも、何の役に立つのかと思い悩んでいました。


一番、憶えているのは、結婚して二人目の子が生まれる直前。

同僚に誘われて、主任として新天地へ。

当初は順調でしたが、思い悩むことが増えました。

勤務時間も長時間化して。

きわめつけは、元同僚。施設長の一言でしたね。


「お前は部下のことが分かっていない」

これが、僕の胸に楔を打った。


今なら、お前は俺のことが分かってない。そう、言い返しそうですが。

あの時はお互いに若かったんだと思います。


何もない時間帯に、涙が自然とこぼれちてしまう。自分では頑張っていると思っていた。時間を犠牲にしてでも、作り上げようとした。それこそ家族との時間を犠牲にして。


考え出すと、止まらない。

体が震える。

それを誰にも言えない。

そんな毎日が続くなか


奥さんが、僕に言ったんです。


「この子(二番目の子)が産まれたら、違う場所で新しいことにチャレンジしてみない?」


この言葉に救われた――。

意固地な僕は「辞めよう」と言われても反発するだけだった。


彼女は言葉がけが上手い。

本当にそう思います。


「れきさんは、どうしたい?」


その会社が間違っているよ、でもなく。

僕のやってきたことは否定するでもなく。


まず、僕の言葉を待ってくれた。

そんな彼女の存在が、どれほど心強かったか。


恥ずかしながら、まるで子どものように

あの日、泣いたことを憶えています。




自殺が増えています。


令和4年の自殺者は、21,881人。前年に比べて874人増。(↑4.2%)

※令和四年中における自殺の状況より(引用:警察庁web)

https://www.npa.go.jp/publications/statistics/safetylife/jisatsu.html


生き辛い世の中なのか。

恵まれている世の中なのか。

それは人それぞれ感覚が違うのかもしれません。


でも、あの時の感覚を思い返すと。僕はたまたま自殺という「選択肢」を選ばなかっただけ。そんな気がするのです。


追い詰められたら、正しい判断なんかできない。そもそも、正しい判断がなんなのか。未だに、僕は分かりません。



「あの時、心療内科にかかっていたら、うつと診断してもらえたかもね」

だいぶ時が経過して。奥さんは、そんな言葉を投げかけました。


もう一つ、こんな数字があります。

これは令和3年度。

日本の死者数は約143万9809人。死因の内訳、第一位は悪性腫瘍(がん等)

第2位は心疾患。

第3位は老衰。

これは、超高齢社会と言われる日本を如実に表しています。


※引用:厚生労働省 令和3年(2021)人口動態統計月報年計(概数)の概況

https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/geppo/nengai21/


そのなかで、悪性腫瘍。二人に一人が【がん】と言われる時代です。


尾岡は、医療法人の地域連携室という場所で、入退院、介護、施設入所についてのご相談を受けています。


そのなか【がん】の患者さん、ご家族とご縁をいただくことが多い。

「死」って、こんなに身近なんだと痛感し――麻痺しそうになる自分がイヤになります。


末期がんで、治療の施しようがなければ、病院での対応は終了です。その後は、疼痛緩和を目的とした、緩和ケアに意向する。


一般病棟では診てることはできません。

在宅へ退院。もしくは緩和ケア病棟への移行。ご高齢の方、もしくは40歳以上の介護保険第2号被保険者であれば、緩和ケア対応の施設も選択肢でしょう。


医療の現場では、予後があとどのくらいか。時間を予測して、患者さんやご家族にアプローチをしていきます。

このスピードが早い。

本人も家族もついていけないことが、しばしば。

でも【がん】の進行は、発症部位にもよりますが、想いがついていけないほど、早い場合があるのです。


この社会では、僕らが意識していないだけで死が身近なのです。


だからと言って、自殺という選択肢がよぎった方を否定するつもりはありません。

その感覚が、全部が分かるとはいいません。


でも、あの時の感覚を思い出すと。

何も考えられない――そこだけは理解できるんです。


最終的に「自殺」という選択肢を選ぶ心理を想像できてしまう自分がいます。


でも、と言わせて欲しい。

自分が何者なのか。

今でも、僕は分かっていない。


今でも「自分の満足した野菜が作れない」というおばあさんがいました。

「自分のしてきた仕事よりも、孫の方が素晴らしい」

そう言うおじいさんがいました。


世の中には、完全に孤立してしまった人もいる。孤独死が悲しいかどうかの議論もあるでしょう。でも、今何者か、悩んでいる方がいたとして。


誰か、大切に思っている人はいないでしょうか。

できれば、周囲の人に漏らして欲しいんです。

今、こういう状況だよ、って。


もし周囲の人が声をキャッチしたら、聞いてあげて欲しいんです。

答えを押し付けるんじゃなくて、その人の気持ちを。できるだけたくさん。肯定も否定もしなくて良いから。


「そうなんだね」

って。

「そう思ったんだね」

って。


それだけで、救われることがある。実際、僕は相方さんに救われました。




僕自身、何者なのか。

そんな答えは、やっぱり出ない。

何者かと問われたら、今なら


「尾岡です」

って、そいつに答えます。


あなたは何を為した人ですか? と問われたら、そいつに

「そもそも、あなたは何を極めた人ですか?」

と問い返します。


僕は僕です。

あなたはあなたで良い。


死後に評価された画家、音楽家、小説家は数知れず。でも、その人達が生きた時代、価値がないなんて、そんなことはない。


あなたは、これから何かを為す人です。

誰にしも影響力がある。


母になるのかもしれない。

カクヨム作家かも。

友を助ける人かも。


だって、あなたは自分が何者なのか真剣に悩む、優しい人じゃないですか。

興味がなければ、そもそもブラウザバックですよね?

あなたは、人の悩みに耳を傾けられる人なんだと思います。



そして、もしかしたら、イノベーションを興す人なのかもしれない。


例えばケンタッキーフライドチキンのカーネルサンダース

彼は65歳で起業しました。


遅いも速いもない。

この世の中、死は近い。

時々、甘美に手招きをすることも理解する。


でも、少なくともこのエッセイを読んでくれたあなたに

僕は救われた。


だから、心の底から

「ありがとうございます」と

言わせてください。


ヨムことで影響力がある。

カクことで影響力がある。


同じように、あなたの行動が

誰かに影響して、化学反応をおこす。


結局、何者なのかは、誰かが

勝手に決めてくれたら良いと思うんです。


だって、あなたの行動は

誰かにとって、絶対に影響力があるんですから。

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