第11話 ゴール!
「うおおぉぉぉぉぉ!!」
「だっしゃらぁぁー!!」
途中までは和やかに飛んでいたがゴールを目視した瞬間、私と
いっつもそんな余力あるならもっとコンスタントに出せば良いのに、と翔には言われるが、なんかこう気持ち的な意味で?本能的に?全力ラストスパートしちゃうんだよね。
結果は僅差で私の負け。
農作業してる人間のスタミナはやっぱり強いわ。
ぜぇはぇゴールゲート近辺で箒放り出して寝っ転がってると魔法少女の豪華ステッキみたいなのと箒を携えた翔ちゃんが顔を覗き込んで来た。
「二人共お疲れさま。むこうで参加賞貰えるよ」
お、おう、ありがとう。でもまだ起き上がれねぇんだわ。
あとそんなことより気になることがある。
「翔、お前、スタートの、とき、そんなん、持ってた、か?」
呼吸の合間、亜留斗が翔の手にするステッキに視線を向けながら問いかけた。
「ああ、これ?」
小首を傾げながらステッキを持ち上げる姿はまごうことなき魔法少女。今からここでコスプレ撮影会始まりますか?って感じだ。
「これ、今年のトロフィー」
サラッと言ってくれちゃったが、え、マ?それって優勝したってこと?!
「マジかー!おめでとう!!」
思わず起き上がって叫んだ後、げほげほと咳き込んでしまった。体はまだ酸素を欲している。激しく二酸化炭素吐き出してる場合じゃない。
つい無茶をしてしまったがそれくらいの衝撃だ。
去年の翔の成績は三位。それを考えれば不思議でもなんでもない成績だが、去年の優勝者はそれこそ5年連続優勝という猛者だったのに一体今年はなにがあったんだ?
調子悪いって話も聞かなかったのに。そりゃ翔だってトレーニング積んで来たのはスタート前に触った体でもわかるが……。正直大どんでん返しというか驚いてしまう。
翔もあの人にはまだまだ追いつけないって言ってなかったか?
内心首を傾げていると翔が明後日の方向に視線を向けながら「実は……」とレース中のことを話してくれた。
「僕の足があまりに美しすぎて……抜かせなかったらしいんだ」
そういった翔の目は虚無ってた。
え、それって控えめに言ってもへんた……いやいや痴漢?いや視姦されながら飛んでたってこと?やべぇ。
ええーーーー
思わずしみじみと翔のすらりと伸びる足を見つめてしまった。
あ、うん。この足は見ちゃうな。
私は腰の細さに目がいちゃってたけど、改めて言われてみると綺麗な足だわ。
つまり飛田さんは今年の大会衣装に負けたってこと、か。
やっべぇぇ!10年先まで
絡みないからわざわざ行く気はないけど、何かあったらつい翔の足のことをネタにしてしまいそうだ。
まぁでも?そんな視線に耐えながらも飛び続けれたんだからそれは翔の実力ってことで?
なんとかフォローしようとそんなことを口にしたら翔の顔がますます淀んだ笑みに変わる。
「いや、もう、振り切りたくて全力以上出したおかげで大会レコード更新できたよ」
ははは、とか弱げな乾いた翔の笑い声が朝日差し昇る薄ピンクの空に溶けていった。
現代魔女のサバトはスポーツ大会?! 宇佐はなこ @usadi
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