ChainedBrave / 首輪付き異世界勇者

はいぐろ

第0話

- prologue -



――――


次に少年の目に映ったのは、

突き抜けんばかりの紺碧の空だった。


陽光の温もりが少年の背を包み、

若草の香りが少年の鼻を擽り、

薫風の巡りが少年の黒い髪を揺らす。


黒。


火でもなく、

水でもなく、

風でもなく、

土でもない。

『在らざる金色』とも違う。


まるで夜の闇を縒ったような、

そんな黒だった。


「……」


少年は空を睨む。


きつく結ばれた口元には確かな意志があり、

固く握られた拳には確かな覚悟があり、

空の碧を映してもなお

黒としか呼びようのない昏い瞳には確かな


「ルゥァマギイ」


掠れた声で空に投げた言葉は、

果たしてどのような意味だったのだろう。

たった一言をその場に残し、

少年は踵を返して歩み始める。


痩躯の足取りはいかにも儚く、行く宛も定かではない。


その旅立ちを見送る者は誰一人おらず、

その来訪を迎える者も誰一人いなかった。

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ChainedBrave / 首輪付き異世界勇者 はいぐろ @haiguro_ayana

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