愛と祝福と絶望と!暗黒の帝王ウーマシーカー!
第51話 愛と祝福と絶望と!暗黒の帝王ウーマシーカー!1
カーテンを透かす太陽光が、もう高くなっていることに、暗黒の帝王ウーマシーカーは気づいていた。
いまだベッドの中。目は覚めている。ただ、出たくはない。
執事のシッツージも分かっているのだろう。いつもの起床時間はとっくに過ぎていても、まったく起こしにくる気配もドタバタドタバタ(足音)バン!(ドアを開ける音)
「ウーマシーカー様大変でシッツージ!!」
「起こしに来ないって期待を秒で裏切るななのじゃ」
ウーマシーカーはやれやれと身を起こし、黒いずきんをしっかりとかぶり直した。
「で、何があったのじゃ? もしや寿司職人ツマゴが……」
「そのまさかでシッツージ! 救世主に敗北し自由恋愛禁止軍団を脱退!
救世主がこちらに――」
「そうか……ツマゴまで……
そしていよいよ、救世主との対面なのじゃな。
ここに来るまでに高くけわしい山を越えねばならぬ。シッツージよ、救世主はあとどのくらいで着きそうじゃ?」
「それが、山がなくなってまシッツージ!」
「バカなーッ!?」
ウーマシーカーは窓に駆け寄りカーテンを開けた。
そびえ立つはずの山はそこになく、おだやかな晴天に照らされる真っ平らな土地、そして何かが猛スピードで接近してくる音。
◆
一路暗黒の帝王のもとへ向かわんとする救世主一行!
バカップルのコイチローとアイリ、王国兵士ツッコ、純白騎士トワ、そしてデビル幼女ドエィム!
「なんかめちゃくちゃ強そうなオーラ『ツエインヘリヤル』!」
「ヒィィィこんな強そうな人に対して頭が高くてごめんなさいサンミャク〜! 平らになりますサンミャク〜!」
「忍耐のロウソク『キャンドルテイン』……!」
「ハァハァたくさん踏んでくださいジュモク〜! この通り横になりますジュモク〜!」
「ほらアイリ、行くよ。ぎゅーっ」
「はふゥんコイチローに抱きしめられて愛の興奮が高まるよぉ〜っ♡♡♡」
「なんかもう全員規格外だなオイ!?」
平らにならされた土地を、鼻血噴射出力で滑走する樹木に乗って駆け抜ける!
「このまままっすぐ突っ込む……と言いたいところだけど、さすがに親玉まで直行は無理だよね」
立ちはだかる自由恋愛禁止軍団の群れ!
「ワールモッノッノ(笑い声)! ここから先は一歩も通さんウギャーッ!?」
蹴散らす!
「城の入口が見えた! このまま突っ込むよ!」
「あいかわらずムチャクチャしやがるぜ……!
あーもーこのまま行ってやるよ! 俺はアイラッビュ王国突撃隊長ツッコだ!」
城門を破砕! 突破!
「ウーマシーカーの場所は分かるかい? ドエィム」
「城の最上階の部屋にいるはずですぅ! でもそこまでたどりつくのに……」
うぃーんがしょん! ザバザバ! めらめら! ぶらーんぶらーんびんよよよーんシュポシュポずがががぽっぴろぺー(さまざまな機械が動き回り行く手を適度にはばみジャンプしたりロープにぶらさがったりスイッチ押したりしないと先に進めない仕掛けが動く音のさま)
「いやテーマパークのアトラクションか!?」
「アクションゲームのステージギミックみたいにも見えるね」
「全部乗り越えないと奥まで行けないですぅ!」
「もうちょい別の道ねーのか!? 幹部だけ通れる秘密の道とか!」
「私たちも……円卓会議があるたび、毎回これを通って円卓の部屋に行ってた……」
「自由恋愛禁止軍団ってバカしかいねーの!?」
「コイチローわたし怖いよ〜! 失敗したら水に落ちて沈んじゃう〜!」
「はっはっは、何を怖がってるんだいアイリ?」
コイチローはアイリの手を取って、優しくささやいた。
「だってきみはもうすでに、僕と恋に落ちて愛の深みに沈んでるじゃないか」
「コイチローっ♡♡♡ そうだよねっわたしはもう恋のディープブルーに深くハマって愛の水圧百万気圧♡♡♡ 目の前にどんな障害があっても全部ぺちゃんこの障子戸同然ぺらぺらインシデントだねっ♡♡♡」
愛の桃色オーラが膨張し、屋内の気圧と気温をぐんぐん蒸発させた。
圧力により機械仕掛けの歯車は全部はじけ飛んで動きを停止し、水は温度で干上がって簡単に歩ける床が出現した。
「さあ行こう! 僕らをはばむものなんて何もないよ!」
「ギミック無視もいいところなデタラメだなやっぱおまえら!?」
「私も……やろうと思えば、『ツエインヘリヤル』であれくらいできる……」
「あたしだってぇ、生き物が相手だったら、あんな感じのことはできますよぅ……!?」
「全員そろいもそろってデタラメなんだよなぁ!?」
――――――
・ラブバカ豆知識
風雲・自由恋愛禁止城のアトラクションステージは単純に乗り越えるほか、タイムアタックや隠し部屋探しなども楽しめるぞ。
ステージに隠されたミニチュアウーマシーカー像を四つ集めると景品ゲットだ!
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