第22話 心とろける炎となれ!デビル幼女ドエィム!6

 ドエィムは歯噛みして、ロウソクを振った。


「結局そういうところなんですよぅ!!

 自由恋愛主義者なんて、守りたいものだけ守る差別主義者のゴミクズなんですぅ!!」


「そうだね。僕はアイリを守るためなら、世界を敵に回したっていい」


 コイチローはパラソルを複数展開し、ロウを防いだ。


「だから、そんな僕らが救世主としてもてはやされる世界なら、僕は全力で守るよ」


 アイリを抱き寄せて、二人のアホ毛がハートマークになって、コイチローは向かい合うデビル幼女へと告げた。


「元の世界で生きられなかった、ゴミクズみたいな僕らだから」


 ドエィムは複雑に眉根を寄せて、歯ぎしりした。


「ゴミクズが救世主になれるならッ!!

 なんであたしたちが!! 救世主になれないんですかァァァァ!!」


 真っ赤なロウがコイチローらに向けて渦を巻く!

 コイチローとアイリは抱き合いイチャイチャし、桃色オーラを噴出させて回避しさらに接近する。

 ドエィムは攻撃をまき散らしつつ、ドM大樹にロウを垂らして調教し、枝を操作させて立体的に飛び回った!


「誰のための救世主ですか!! 誰のための自由恋愛ですかッ!!

 自由にできるのは結局、『強い』方の人間だけなんですよぅ!!」


――あ、あのあのあたしっ、あなたのことが好きですぅ、付き合ってくださぁい……!


――え、ごめん普通に無理。

  だってほら、ボクだって選ぶ権利があるというか……きみツノ族だしさ……


「そんな人間が、ちょっと自分たちの権利が危うくなるからって、救世主なんて呼んで祭り上げてぇッ!!」


――おばあちゃんが言ってたぜー、ツノ族は卑怯で乱暴者なゴミクズだって!


――違うぅ……違いますぅっ……ぐすっ……あたしは、そんなんじゃぁ……!


「それが弱者を踏みにじることだなんて、思ってすらいないんでしょうねぇ!!」


――ツノ族ってさー他の種族より火に強いんだろー?

  試してみようぜー!


――やめっ……やめてぇ……!


「結局自由恋愛だなんだって言ったって!!」


 ドエィムが大きくロウソクを振りかぶった。


「自分と同じ種類の人間と仲良くすることしか、できないくせにィィィィ!!」


 全力の、ロウのまき散らし。

 赤いロウの水滴が降る。

 その中に混じる透明な水滴は、ドエィムの無意識だった。


「きみの言いたいこと、なんとなく分かったよ」


 桃色オーラでロウを揮発させて、細めた目を向けて、コイチローは問いかけた。


「それで、自由恋愛を禁止することが、どうしてきみの救いになるのかな?」


 ドエィムは歯をむいて、吠えた。


「違う種族で仲良くできるなんて、誰もそんなゴミクズみたいな夢を見なくて済むからですよぅッ!!」


 ロウソクが加熱。過熱。

 揮発したロウが瞬間的に着火し、燃焼し、膨張し、爆炎となった。

 爆風にコイチローはあらがいきれず、アイリを抱きかかえたまま吹き飛ばされた。


 そのコイチローの背中を、ツッコが背中で受け止めた。


「コイチロー。アイリ。俺はあんたらを、救世主として出迎えた。

 けどもしさ。そんな特別な存在じゃなくて、普通に出会っただけだとしても。

 俺はあんたらと、友達になったと思うぜ」


 コイチローは振り返らず、微笑んだ。


「うん。うれしいよ。僕たち二人きりじゃなくて、きみがいてくれることが、こんなにも心強い。

 ありがとうツッコ。この世界で最初に出会った、友よ」


 ドエィムの視界の先で。

 背中合わせのまま、コイチローとツッコは、こつりとこぶしをぶつけ合った。

 異世界の人間と、この世界の人間が。


(ああ)


 ドエィムは、自分が泣いていることを自覚した。


(なりたいなぁ。あんなふうに。

 なれないから、なりたいと夢見て傷つく人がいるから、自由恋愛なんてない方がいいって思ったのに。

 ……なれるなら、あたしも、あんなふうに、なりたいよぉ……)


 コイチローが、アイリをぎゅっと抱きしめた。

 大興奮ドMAX鼻血大噴火が、赤く、ドエィムに迫った。


「誰も、ゴミクズなんかじゃない方が……いいに決まってるじゃないですかぁ……!!」


 涙を流すドエィムを。

 真っ赤な濁流が、塗り込めて。




――あ、あのねぇ、呼び方、ウマちゃんって、呼んでいいかなぁ?


――む……まぁ……いいじゃろ……

  じゃあワシも、えっと……ドエちゃんって、呼ぼうかのう……




 鼻血濁流が、破裂するようにはじかれた。

 コイチローは、そしてドMツッコは目を見開いて、ドエィムの姿を見た。

 赤く、染まる。

 鼻血ではない。


「おいまさか、自分の体にロウを……!?

 ロウで鼻血をはじいた、だけじゃねぇ、まさか……!」


 ドエィムはうっとりとした顔を向けて、くねくねと身を踊らせた。


「あはぁぁん♡♡♡ 熱いのがぁ、気持ちいいよぅぅ〜っ♡♡♡」


「自分をドMにした〜〜!?」


――――――


・ラブバカ豆知識


和ロウソクと呼ばれる種類のロウソクは、融点が低いためプレイに適する。

クールジャパン。

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