測れあなたの心の距離!神業測定士ハカリマ!

第7話 測れあなたの心の距離!神業測定士ハカリマ!1

 夜を過ぎて昼を過ぎて、森を抜けて荒野を越えて。


 黒髪さわやかなバカップルの彼氏の方・コイチロー。

 くりくりの目に栗色の髪のバカップルの彼女の方・アイリ。

 そして若草色の髪の兵士・ツッコの三名は、間もなく街に着こうとしている。

 旅の中でなんとなく友情をはぐくんだりして、わくわく顔のコイチローとアイリに対し、ツッコはげんなり顔。


「ありえねーんだけど……マジでさぁ、あんたらさぁ……

 途中でドラゴンに襲われて、それを愛の力で撃退して愛の力で料理してたいらげて……

 ドラゴンって、普通は王国兵士でも十人がかりでやっと倒せる相手なんだぜ……それをあんたらさぁ……」


「愛の力だからね! 僕とアイリの愛は、何者にだって負けないさ!」


「力は神様からのもらいものだけどねぇ〜! 愛それ自体は、転生前から変わらずいつもマキシマムだよ〜!」


「はいはい、バカップルごちそうさま。

 はぁ、人間誰しも愛でなんでもできるわけじゃねーんだよ……」


 じとっとした目を向けたツッコの先で、コイチローは遠い目をした。


「まぁ僕らも、愛しかなかったから前の世界で生きていられなかったんだけどね」


 隣でアイリもなんだか意味深にうつむくので、ツッコはどうにも言葉に詰まった。

 コイチローはぱちんと手を打って、笑顔を作った。


「さぁツッコ! これから行く街がどんな街なのか、僕たちに教えてくれよ!」


「お、おう。もう見えてきたな、あの壁の向こうが――」


 ツッコは目を向ける。

 正面の向こう側、水平線近くまだ大気の厚みに青くかすむ、堂々と構えるものものしい壁。


「防衛都市ツキガキレー。隣国との国境線の目印にして、戦争時代やモンスター時代の防衛拠点となっていた街だ」


 ほへーっと、バカップルはながめて。


「戦争とかあったんだ?」


「俺が生まれるよりずっと前の話だけどな。モンスターにしたって、あんたらがやっつけたくらいのドラゴンはまだいるけど、災害クラスの大物は、わりと最近に駆逐されきったし。

 だから平和な時代が来たと思ったのに、自由恋愛禁止軍団なんてのが出てきてなー……」


 ツッコは苦々しく顔をしかめた。

 コイチローは正面を向いて、うなずいた。


「救世主として降り立ったこの世界の現状、なんとなくつかめてきたよ。頑張るよ、僕たち」


 その横で、アイリ。


「決意を込めたコイチローの表情、かっこいい、推せる……! ラブずっきゅん……!」


 きらきらのハートがくりくりの目からこぼれ出し、でこぼこの地面を桃色に舗装し、とっても歩きやすくなった。


「うわぁバカップル便利ぃ……でも地味ぃ……」


 ツッコはげんなりしながら、桃色ロードを踏みしめた。




 そして、街の目前に到着。

 近くに寄れば、ゆるやかに弧を描く壁の形が見て取れる。

 入り口には、門番。


「さて、どうしよっかな」


「何か問題でも? ツッコ」


「目立ちたくねーんだよな。二人はアイラッビュ王国国王直々の国賓って扱いだから、入るだけなら問題ないんだけど。

 戦争は昔の話とはいえ、国境付近の街ってなると細かないさかいはまだあるし、もしかしたら自由恋愛禁止軍団のスパイがいるかも」


「なるほどね。まあスムーズに通るだけならきっと大丈夫だよ。行こうアイリ」


「うんっコイチロー!」


「あっちょっ、おい!?」


 バカップルは腕を組んで門に近づいた。


「むっ、止まれ! 何者だモンバン!?」


「バカップルです! この通り!」


「あんっコイチロー、人前でそんなっ……(イチャイチャイチャイチャ)」


「うわっバカップル過ぎて一秒でも視界に入れたくないモンバン! チェックとかどうでもいいから通れモンバン!」


「おいこら門番ッ!!」


 ツッコのツッコミも遠く、バカップルは桃色オーラをダダ漏れにして門をくぐっていった。

 ツッコはげんなりしながら、自分も門へと向かった。


「むっ、止まれ! 何者だモンバン!?」


「えーと、王国兵士です」


えある王国兵士がおまえのようなツッコミ体質なわけあるかモンバン! 怪しいやつめモンバン!」


「別にいいだろ王国兵士がツッコミ体質だって!? 俺は別に好きでツッコミやってんじゃねーんだよ!?」


――――――


・ラブバカ豆知識


ここアイシテルノサ大陸には、様々な種族の人間が生活している。

カラフル族、ミミ族、ツノ族、ヤサイ族、ナガーイ族、セクシー族など。

ツッコなどアイラッビュ王国の主な民族はカラフル族。

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