第4話 バカップル参上!3
バカップルのコイチローとアイリは存分にイチャイチャし、屋根から降りてきた。
太陽は嫉妬ビームでエネルギーを使い果たし、夕焼けになっていた。昼前なのに。
コイチローは手の甲で、さわやかにひたいの汗をぬぐった。
「ふう、楽しかったねアイリ。ひとラブラブもとい、ひと仕事すると気分がいいよ。村長さんは大丈夫?」
「た、助かりましたソンチョ。あなたたちただのバカップルじゃないソンチョ?」
「いえいえー、わたしたちただのバカップルですよー! ちょーっと神様から世界を託されただけでー! ねーコイチロー!」
アイリは
横でそれを聞いていて、兵士ツッコは苦悩した。
「ううっ、認めたくねーけど、やっぱあの二人が世界を救う救世主なんだ! 認めたくねーけど!
でも自由恋愛禁止軍団を瞬殺したのは確かだし、俺はあの二人に同行するのが任務……うおわっ!?」
ゴゴゴゴゴ、急に地響きが鳴り出した。
次の瞬間、ツッコが村に来るまでに越えてきた丘が、ぱっかーんと割れた。
「ええーーーー!?」
割れた丘からは、ブーメランパンツに筋肉モリモリ身長二メートル半の屈強な男が現れた。
「マーッチョッチョッチョ(笑い声)! オレサマの部下を瞬殺するとは敵ながらあっぱれマッスル!
てめーらはこの『自由恋愛絶対禁止暗黒幹部』が一人、マッチョマジシャンのマッチョーネ・キンニクール様がじきじきにマッスルハッスルしてやるマッスル!」
「なっ、自由恋愛絶対禁止暗黒幹部……だと!?」
「知ってるの? なんか出てきた兵士さん」
「王国兵士のツッコ・ミヤークだ! 自由恋愛絶対禁止暗黒幹部っていやぁ、自由恋愛禁止軍団を取りまとめる暗黒の帝王ウーマシーカーの直属の部下!
さっき倒した一般軍団員とは比べ物にならねー強さを持つ、強力無比な戦闘エリートってウワサだぜ!」
「その幹部が、なんで丘から出てきたのー?」
アイリの頭のアホ毛がハテナマークになった。
暗黒幹部マッチョーネは上腕二頭筋を盛り上げてみせた。
「地面をウェイトリフティングしてたマッスル!」
「地面を!? 何やってんだ!? ちょい待てまさか丘になってたの最初から丘だったんじゃなくて持ち上げてたのか!?」
「言われてみれば、二、三日前から急に丘ができたソンチョ!」
「もっと早く気づかねーかな村長さん!? そんで二、三日前からずっと持ち上げてたの!?」
「筋肉をじっくり熟成マッスル!」
幹部マッチョーネはオイルのびんを取り出して、自分の筋肉にドバドバかけた。
夕焼け(夕方ではない)の赤に照らされて、筋肉の陰影がドラマティックに浮かび上がる。
「そして見るがいいマッスル! 必殺の筋肉魔法『マチョカリプス』! うーマッチョーー!!」
マッチョーネはオイルのびんを投げ捨てポーズを取った。
筋肉が光り輝いてビームを発射!
「危ねぇバカップルの二人! ぐわあああーー!!」
「ツッコさん!?」
兵士ツッコがバカップルの二人をかばい、被弾!
筋肉魔法マチョカリプスを食らったツッコは。
「う、うおわああああーーッ体中の筋肉が! 筋肉が盛り上がっていくぅぅーー!?」
「うわっ気持ち悪いなツッコさん」
ツッコの筋肉がみるみる肥大化し、服がはじけ飛びボディがテカテカと光沢を帯び体脂肪率ひとケタを軽く下回る両肩ダンプカーマッチョマンに変身した!
「マーッチョッチョッチョ(笑い声)! これが筋肉魔法マチョカリプスの能力! 相手を強制的にゴリマッチョにするマッスル!
筋肉こそ救済! 筋肉こそ人生! 筋肉を信じ筋肉を愛すれば、人は恋をする必要なんてなくなるマッスルー!」
「ぐあああ思考が筋肉に染まっていくー!! 世界を救う時間があったら腕立てしたいと思っちまうー!!」
ツッコは猛烈な勢いで腕立てを始めた!
「ひょええええ……怖いよ怖いよコイチロ〜! わたしあんな脳みそ筋肉の筋肉バカになりたくないよ〜!」
「はっはっは、何を心配してるのさアイリ」
コイチローはアイリを抱きしめて、優しくささやいた。
「知らなかったのかい? 僕たちはもう、魔法にかかってバカになってるよ。
そうだろう? 恋という名の魔法にかかった、恋愛脳の恋愛バカ、にね」
「コイチローっ♡♡♡ そうだよねっわたしたちはバカオブバカ! 世界を救う時間があったら二人でちゅっちゅしていたい! だってわたしたちは!」
二人は社交ダンスのように両手を重ね、アホ毛をハートマークにしてポーズを決めた。
「「バカップルだから!!」」
ばばーん。二人の背後で、桃色オーラが爆発した。
ツッコが腕立てしながら叫んだ。
「シラフでさらっと世界どうでもいい発言しねーでくれねーかな!?
俺、世界を救う救世主を探しに来たんだけどなーー!?」
――――――
・ラブバカ豆知識
マガリカドデパン村の名物であるパン。
これをくわえて曲がり角でぶつかると、恋愛成就するというウワサがある。
しかし村は人が少なくて住宅密集度が低すぎるため、曲がり角はすべからく視界良好。
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