狭い喫煙所で湧き上がる小さな嘆き
散多苦労衆
狭い喫煙所で湧き上がる小さな嘆き
入ったばかりだから許して。
3人しか入れない喫煙所。僕が1人で入ってて、知らない2人組の1人だけ入って来る。もう1人は善意で待ってるのだろう。
はぁ。一息吸う。
僕は困る。感染症予防にうるさくなってる今日では、一般的に狭い喫煙所には1人か2人までの人数制限がある。僕もそれを知ってる。家族連れの並ぶレストランが来た順に呼ぶシステムで、1人で来たけど4人テーブルに案内された時のあの感じ。
はぁ。また一息吸う。
僕は迷う。ここで出たら残りのタバコが勿体無い。あとちょっとなんだ。子どもの頃、もう少しでゲームがクリアできそうなのに、夕飯を作り終えた母さんが「早くしなさい!」と呼んできたのを思い出す。
はぁ。再び一息吸う。
僕は思う。そこで待ってる人に気を遣って出て来たと思われたくない。全然気にしてないことを謝られる感覚。
もう少しだから待っててと伝える度胸もない。人様の関係性にできる最初の壁はタンポポや雑草ぐらいしか生えることができないアスファルトのようだ。この人は僕をどんなふうに見てるんだろう。
あとちょっと。
はぁ。僕はさらに一息吸う。
そうやって葛藤してる僕を置いて、その人は入って来て、連れに言った。
「特に人数制限とか書いてないんだね」
はぁ。僕は最後の一息を思いっきり吸ってその場を後にした。
そうなんです。もっと早く気づいてくれればね。
狭い喫煙所で湧き上がる小さな嘆き 散多苦労衆 @santa43210924
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