エピローグ
結局。
二人を担いで学校を出てから数分したら、何事もなかったかのように部長は戻ってきた。
「何があったんです?」と聞いても
「ちょっとね」とはぐらかされる。この人の秘密主義はいつものことだ。が、
背負っている彼女がまだ寝ていることを確認してから、問い掛ける。
「それで、」
今だけは、何が何でも話してもらわなければいけないことがある。
「今回は何を企んでいたんですか?」
「なあに、君の新しい友人と少しばかり縁を「冗談言わないでくださいよ」
一瞬訪れる静寂。その後、ため息とともに語りだした。
「...君も見ただろう。彼女の動きを」
「ええ、彼女も何か特別なんですか?あなたみたいに」
「それを確認するためだった。夜の学校は、所謂そういう場所だからね。異常が、よく映る。だが、」
途中まで、あの男との戦闘までは、まだ火事場の馬鹿力とかで説明できたかもしれない。だが、緋ずきんさんとの遭遇後は、明らかに異常だった。その身体能力も、耐久力も。
「そんな必要もない程、異常だったと」
「そういうことだ」
...噓はついていないようだ。どこまで話しているかは分からない。が、これ以上は聞き出せないだろう。
「さて、話も終わったことだし、君たちはもう帰りたまえ。ああ、長谷川君は私が預かろう。君は狩谷君を送ってあげなさい。家はここだ」
...何で知ってるんだこの人。
「...」
なに
「...て」
うるさいなあ
「...てください」
すごく眠いんだから
「起きてください」
「...ッ!」
目覚めた。そうだ。部長は、アレは、ここは、
「ねぇんむぅっ!?」
口をふさがれた。ご丁寧に鼻まで。そして、気付く。ここ、家の前だ。こんなところで大声を出したら、面倒なことになるのは間違いない。
口をふさいでいるのは、神宮さん。人差し指を唇に当て。『静かに』のジェスチャーをしている。コクコクと頷くと、手が離される。
「部長は」
「無事です。長谷川さんは、部長と一緒です」
ソレを聞いた瞬間、どっと疲れが私を襲う。へたり込みそうになる身体を何とか立たせる。
「詳しいことは、明日話します。とりあえず今日は休んでください。私も、家に戻らないとなので」
聞きたいことはまだまだあるけど、ソレが何だか分からない。質問することを眠気が許さない。まあ、あしたはなすっていってるし、それでいいや。
「じゃあ、おやすみ」
「...はい、おやすみなさい」
鍵をこっそりと開けて、家に入る。寝ているであろう両親を起こさぬようにそっと部屋に向かう。そのまま布団に倒れこもうとしたとき、服が結構ヤバいことになってると気づく。僅かに残った理性で服を脱ぎ、ソレをベッドの下に押し込んで隠す。それ以上は何もする気が起きずに、ベッドに倒れこむ。
そして、眠りにつくまでの数秒間で、頭にあることが浮かぶ。
アレに切りかかった時から部長が来るまで、何してたんだっけ。
あっ。と思ってそれを手繰り寄せようとしても時すでに遅く、私の意識は眠りへと落ちて行った。
殺したがりの少女と死にたがりの不死者 魔導管理室 @yadone
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