第9話 魔術師VS暗殺者
「お兄ちゃんどうして此処にいるの!? 寝てたはずじゃ———」
「姫花こそ何してる? 夜中にこんな可愛い子が外に出たらいけないじゃないか。お兄ちゃんは姫花大好きだから気付いたら追いかけるさ」
「うっ……でもどうやって……」
姫花はバツが悪そうに目を逸らす。
しかし俺が追いつけた理由が知りたい様で、チラチラと俺を見ている。
そんな姫花の頭に手を乗せ、魔術師達の方を向く。
「ちょっと敬語は面倒だし辞めるぞ。それで———家の妹に何の様だ? そもそもお前ら誰?」
「兄……? ああ! 一般人の兄か!」
「どうやら俺は人気者らしい。こんな知らないおじさん達に知られてるんだし」
「お、お兄ちゃんっ! そんな事言ってる場合じゃないよ! 早く逃げて!」
「まぁ大丈夫だから少し見てな。……それでもう一度訊くけど、お前達誰?」
俺がそう言うと、魔術師の中で唯一姫花と話していたローブを纏った男が声を上げた。
「我らは偉大なる魔神の使徒様を教祖とした『魔神教』の魔術師である!」
「———って言うサイコパス宗教だよお兄ちゃん」
そう言って姫花がボソッと耳打ちしてくる。
うん、俺もアイツが所属してる所は間違いなく頭のおかしい集団だと思う。
まず『魔神教』とか言う組織名から嫌な感じがプンプンとしてくるし。
「その……魔神教? って言うのはどんな活動をしているんだ?」
「それは勿論魔術師の育成と、魔女の生体を研究して魔術を超える魔術を生み出す事だ! 使徒様は望んでおられる……魔女と言う不穏分子の生体解明を!!」
「要は魔女をそこら中からかき集めて自分たちの糧にしてやろうって事か?」
「その通りにだッ!! そして世界は使徒様の下に正しく生まれ変わるのである!!」
「因みに何人居るんだ?」
「これは本当は機密なのだが……まぁ冥土の土産に教えてやろう! 数は1万を超える!! どうだ魔女の兄よ? これで崇高な使徒様の為に妹を捧げる気になったか?」
魔術師が両手を広げて天を見上げながらそう言うと、周りの魔術師達は完成と拍手を送る。
なるほどなるほど……その使徒様って言うのが誰だか知らないが、ソイツの狙いは世界を自分のモノにすることか。
その過程で危険な魔女を実験体にするか自分達の奴隷として使い潰そうという魂胆か。
数百人程度だと踏んでいた規模も思った以上にデカい。
まぁだが———
「———お前達は俺の敵ってわけだ」
俺は手元に隠していた短刀を逆手に持ち、姫花の守るように構える。
「……一体何の真似だ?」
「何の真似って……ただ兄が妹を守ろうとしているだけだろ? 何かおかしいのか?」
「おかしいとも!! この世の人間は全て使徒様のモノ! 使徒様が欲しがれば泣いて喜びその身を差し出さなければならないのだ!!」
「それはお前ら頭のおかしい連中だけでやっててくれ」
「頭がおかしいだと!? 使徒様の下僕である我らが!? 許せん、断じて許せん! 掛かれ信者達よ!!」
「「「「「「———【火炎球】ッッ!!」」」」」」
男の号令と共に残りの6人が掌に幾何学的模様の陣を出現させて魔術を発動させる。
アレが野橋父が言っていた魔術式であろう。
確かに効率が悪いな……。
式を出現させるのに魔力を使っているし、変換するのも遅く、わざわざ魔術名まで言わないといけないらしいので、明らかにロスが多い。
1秒ほどで展開された6つの火の玉が、俺に向かって一直線に発射された。
「お兄ちゃんッ!! くっ———【部分消———」
「———大丈夫だ姫花」
俺は姫花を俺の方に抱き寄せると、無詠唱で【影渡り】を発動させて、影の中に沈む。
そして影の中を一瞬で移動して相手の後ろ側から飛び出し———
グサッ———ヒュッ———。
「アガッ———ッ!?」
「———ッッ!?!?」
1人の首に短刀を差し込み、1番遠くの者に短刀を投げて喉仏を貫く。
しかし姫花を抱き締めているせいか、短刀を首に差し込む時に少し位置がずれて声が出てしまった。
その声で魔術師達は俺に存在に気付く。
「ば、馬鹿なっ!? お前は我らの魔術によって灰になったはず……」
「残念だが、あの程度の火は蝋燭と何ら変わりはないし、そもそも遅すぎて避けるのは容易だった」
俺は話しながらも投げた短刀を魔力で操作して呆けた顔を晒している魔術師の首を的確に刺し貫いて行く。
流石に俺が一般人でない事に気付いたらしい男が声を張り上げる。
「皆警戒せよ!! 奴は奇怪な魔術を操る!! お互いが守れるように集まれ!!」
「「「はっ!!」」」
男の号令と共に残りの魔術師が男の下に集まろうとするが、それをただ見物しているほど俺は甘くない。
即座に短刀を3つに増やして同時に操り、3人同時に首を刎ねて即殺。
地面に頭が落ちる前に俺は男の前に移動すると、その心臓を短刀で突き刺す。
「ゴフッ———ば、馬鹿な……貴様は一般人のはず……! 何をじだァ”!?」
男が口から血を吐きながら息絶え絶えに声を漏らした。
俺はそんな男に無表情、無機質な声で返す。
「情報ありがとな。お陰で心置きなく殺せた。お前が馬鹿で良かったよ」
「ぐ、ぐぞッ……ぎざまは”いづが……使徒ざま”にごろざれるだろう……」
「そんな日は永遠に来ないと思うがな」
俺がそう言う時には既に男は死んでいた。
俺は男に刺さった短刀を引き抜くと、綺麗に血を拭う。
「これで取り敢えずは終わり———」
「———なわけ無いでしょ!! お兄ちゃん、これは一体どういう事かしっかり教えて貰うからね!!」
姫花が俺の襟を掴んで鼓膜が破れそうなほどの声量でそう叫んだ。
姫花の瞳には安堵と困惑、そして少しの怒気が入り乱れていた。
しかしそんな姫花に俺もニッコリと笑いかける。
「それは此方の言葉でもあるぞ姫花。———一体どういう事かキチンと説明して貰うからな?」
「……お互いに秘密じゃ……ダメ?」
「ダメ♪」
俺がそう言うと、姫花は俺の襟をそっと離して目を逸らした。
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下⇩⇩⇩の☆☆☆を★★★にしてくれると作者のモチベ上昇。
偶に2話投稿するかも。
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