第2話 暗殺者の帰還

 俺は光のベールから解放されると、そこは先程の魔王城とは全く別の、知らない森に転移していた。

 しかし俺には分かった。

 此処が日本であると。

 

 何故なら周りに魔力を異世界の時ほど感じないからだ。

 魔力の豊富な森の中であるにも関わらず、である。


「ははっ……遂に戻ってきた……! ああ……早く家族に———妹に会いたい……!」


 俺は足元に置いてあった俺の鞄を拾い上げて全速力で妹が待つ家に戻る———と同時に気付いた。


「———身体能力が戻ってないんだが……」


 そう、俺の走る速度は余裕で自動車よりも速かったのだ。

 明らかに異世界での身体能力を引き継いでいる事が分かる。

 今新幹線と競争すればいい勝負かもしれない。

 外見は異世界では何故か全く変わらなかったのでずっと17歳の173センチのままなのでこれも変わりはないのだが。


 俺は一旦急ブレーキし、体をあちこち調べてみる。

 転移前は全然筋肉のないヒョロガリだったのだが、今はシックスパックが出来ており、細マッチョと呼ばれる程の筋力量を有していた。

 これも勿論異世界に居た時と変わらない。


「———【影渡り】」


 その瞬間に俺は自身の影の中へと落ちて行く。

 魔法もまるで手足の様に問題なく使える。

 これも異世界と変わらない。


 俺は外に出て魔法を解除すると、一度天を仰ぎ、そして大きなため息を一つ。


「よし、取り敢えず妹に会ってから考えるか」


 俺は一旦考えを放棄して再び自分の家へと走り出した。




▲▽▲





 俺は今、家の前に立ち、インターホンを押すか押さないかを迷っていた。

 いや、この世界では僅か3時間しか経っていないとソフィアには言われているとは言え、俺の中では3年ぶりなので少々帰りずらい。


 そんなこんなで押す方ができずに玄関に立ち尽くしていると、後ろから声を掛けられた。


「ちょっとお兄ちゃん! 今買い物の後で重たい荷物持ってるんだからそこ退けて!」


 俺が声の聞こえた後ろを振り向くと———そこには大きな買い物袋を両手に抱えた俺の妹である、姫花ひめかが居た。

 姫花はそこそこ顔の整っている俺とは違って、100人中100人が美少女と言うほど(調査済み)の可愛さを持っている、俺の自慢の妹だ。


 日本人特有の漆黒の髪はラビットスタイル? とか言うツインテールで左右2つに分かれており、まるでアイドルの様な愛嬌のある可愛い顔をしている。

 そんなに可愛いのに性格も良く、中3にもなって、兄で異性の俺を嫌がらないとかマジで天使。


「姫花!? 今日の買い物は俺のはずじゃ……」


 俺は買い物の行きに異世界に転移されたので、今日が自分の担当の日だとよく覚えている。

 それなのに妹の姫花が袋を持っている事に驚く。

 

 すると姫花は頬を膨らまして眉間にシワを寄せ、ぷんぷんと可愛く怒る。


「お兄ちゃんが全然帰ってこないからでしょ! 電話も繋がらないしRainしても既読にならないんだもん! だから学校に居るのかもと思って買ってきたの!」


 俺はその言葉を聞いて直様スマホを確認する。

 そこには沢山の着信履歴と『今何処?』『大丈夫?』などの心配のRainが来ていた。


「ごめんな、心配かけて……少し大変な事に巻き込まれてたんだよ」

「え!? 大丈夫だったの!?」

「うん。案外すぐに終わったんだ。それじゃあ今日はお詫びも兼ねて、お兄ちゃんが姫花の好きなとろとろオムライスを作ってあげよう」


 俺が姫花のツインテールを崩さない様に注意しながら頭を撫でながら言うと、途端にパァと顔を明るくしてニコニコになった。


「ほんと!? じゃあ早く食べれる様に先にお風呂入っとくね!」

「ああ頼む。その間に作っておくからな」

「うんっ!」


 姫花はそう言うと、鼻唄を歌いながら機嫌良さそうに家に入って行く。

 俺はそんな姿に懐かしく思いながら、3年ぶりに我が家へと帰宅した。



「———ただいま」

「おかえりお兄ちゃん!」



—————————————————————————————

 こんな妹が欲しい。


下⇩⇩⇩の☆☆☆を★★★にしてくれると作者のモチベ上昇。

 偶に2話投稿するかも。 

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