異世界帰りの暗殺者が世界を陰から支配する

あおぞら

暗殺者と魔女と陰の組織

第1話 暗殺者———鈴木闇夜

「———ターゲット魔王を確認。只今より暗殺を決行する」

『———了解です。私達は幹部の相手をしておきます』


 俺は転移の際に貰った無線機を使って仲間に連絡。

 

「大丈夫か? 何なら俺が先に倒しておくが……」

『大丈夫ですよ。貴方様の分身も居ますし、負ける事はありません』

「……そうか。1分以内に終わらせる、それまで耐えていてくれ」


 俺はそれだけ言うと、無線を切る。

 魔王軍幹部達も相当な実力者で、幾ら人類最強達が集まっているとはいえ油断は出来ない。

 皆のためにも俺が早く魔王を倒さなければ。


 俺は口に出す事なく、スキル———【隠密】と【透明化】を発動。

 更には闇魔法の【隠れ身】も追加で付与。


 これで魔王軍幹部であろうと俺の接近に気付くことは不可能だ。

 しかし相手は親玉の魔王。

 バレる可能性も視野に入れていないと危なそうだ。


 俺はスキルの1つである【忍び足】を発動してゆっくりと魔王の死角から音もなく近付く。

 呼吸も止め、心臓の音が聞こえない様に特殊な服を着ている為、今の俺を見つける事は限りなく不可能に近い。

 

 しかし———


「———そこかッッ!?」


 魔王は突如、寸分違わず俺目掛けて【魔光線】を放ってきた。

 俺はバレた事に驚くものの、冷静に体を捻って回避。

 

 だがもうバレている様なので、【縮地】で大胆に懐に入り込み、星剣である短剣を心臓目掛けて突き刺す———事は叶わず、分厚い結界に阻まれてしまった。


「フハハハハハハ! 既に貴様の力は把握済みだ! ———【空間遮断・縮】」


 魔王が俺の分身・・をこの世から一瞬で消滅させる。

 そう、俺の分身を。


 本体の俺は、ずっと少し距離を置いて分身を操作していたのだ。

 そして俺を倒したと思い込んで油断している魔王の心臓に背後から一突き。


「———ガッッ!? ば、バカな!? 貴様は今俺が殺したはず……」

「残念だが、さっきのは俺の偽物分身だ。まんまと嵌まってくれてよかった。そのお陰で案外楽に倒せた」


 俺が薄く笑うと、口から血を吐いた魔王は驚愕の表情のまま、聖剣の力により、瞳の輝きを失くしていった。

 こうして長年異世界を苦しめてきた魔王は、本領を発揮する前に俺と言う暗殺者によって倒されたのだ。


 俺は、死んだ事により、突然重たくなった魔王の体を地面に置くと、一度合掌をしてから炎魔法でその体を燃やし尽くす。

 予め、俺を召喚した王女で賢者のソフィアにそう伝えられていたからだ。


 俺が死体を完全に焼き尽くす頃に、俺の仲間達が魔王の間にやってきた。

 

「遅かったな皆。いや、早かったか?」

「これでも最速です! 魔王を1分以内に倒す貴方様が速すぎるのです!」

「そうだぞ! 俺は幹部を真っ向から2分07秒で倒したんだからな!」

 

 そう言う男は武術の達人で、己の拳一つで人類最強まで駆け上がった変態だ。

 名前はバードン。

 ムキムキの身体のくせに体が柔らかく、足も速い化け物である。


「相変わらず戦闘狂だなバードン」

「別に戦闘狂じゃねぇって。強者との戦いが楽しいだけだ!」


 そう言う所が戦闘狂と呼ばれる所以だぞ。


 俺は相変わらずなバードンにクスッと笑うと、ソフィアに向き直る。

 

「……じゃあ俺を元の世界に帰してくれ。もう俺が居た所で余計な火種になるだけだ」


 この世界は魔王と言う共通の敵がいるお陰で大きな戦争は無かったが、そんな人類の危機の最中でさえ、他国にスパイを出して自身の国が有利に動こうと画策していたくらいだしな。

 どの世界でも人間同士の戦いは避けられないらしい。


 俺がそう言うと、ソフィアは悲しそうな顔を浮かべる。


「……本当に帰られるのですか……? 確かに私が勝手に召喚しておいて何を言っているんだとお思いになるでしょうが、私は貴方様に帰って欲しくありません……」


 ソフィアはスカートの裾を強く握って俯きながら言った。

 そんなソフィアの頭を俺は少し乱暴にクシャッと撫でる。


「わわっ!?」

「ごめんなソフィア。確かにこの世界も居心地はよかったけど……俺は家族に会いたいんだ」

「そうですか……うぅぅ……分かりました、貴方様の意思を尊重します」

「ありがとう」


 ソフィアは地面に魔法陣を描くと、そこに大量の魔力を流し込む。

 そして魔法陣が輝き始めた。


「……これで準備が整いました」

「よし、ならこれでお別れだ。またな、ソフィア、バードン」

「おう! 死んだらまた会おうぜ!」


 バードンが俺の背中をバンバン叩きながらガハハと笑いながら言う。

 力加減が間違っていて大変痛いが、嫌ではない。


 ソフィアはずっと俯いて黙っていた。

 まぁ俺の帰りを惜しんでくれるならこの世界に来た甲斐があったってもんだ。


「ソフィアも頑張れよ。女王になるんだろう?」

「……はい」

「俺たちが救った世界を守ってくれよ」

「…………はい……貴方様の最後のお願い、必ずや達成して見せますっ!」


 俺はその言葉を聞き、徐々に強く輝き出す魔法陣に身を任せる。


「じゃあバードンの言葉を真似するわけじゃないが、死んだらまた会おうぜ」

「———貴方様……いえ、闇夜やみよ様!!」


 ソフィアが俺の方を強い決意の籠った瞳で見ながら宣言する。


「私は闇夜様と会うことを諦めません! いつか必ず闇夜様と再会してみせます! なので———気長に待っていて下さい」

「……ああ、期待せずに待ってるよ」


 俺がいい終わると同時に魔法陣が強く輝く。

 


 こうして俺———鈴木闇夜の3年間にも及ぶ異世界での戦いが幕を閉じた。


 しかし———ファンタジーはどうやら俺を逃してはくれない様だ。



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 作者春休みのため新作2作目を投稿。

 これも出来るかぎり毎日投稿頑張る。


下⇩⇩⇩の☆☆☆を★★★にしてくれると作者のモチベ上昇。

 偶に2話投稿するかも。

 

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