第7話 ギュリトス学園長先生

 わたしたちは入学の挨拶をギュリトス学園長にするために、学園の案内係に学園長室に連れてきてもらった。


 学園寮の隣りの本校舎の離れのトンガリ屋根の北の棟、螺旋階段で昇りその奥の奥の部屋を訪ねた。


 案内係がノックをすると、「どうぞお入りなさい」と優しげな声音のおじいちゃんって感じの返事が返ってきた。


 学園長室に入ると、不思議と人が誰もおらず、代わりとばかりに一羽のカラフルな尾羽根の小鳥がいた。


 小鳥は部屋の中央に木々で作られた止まり木を、行ったり来たりしてる。


「おはよう、こんにちは、こんばんは。ミャアさん、ライアンさん、ソラさん、ローズさん」


 小鳥が綺麗な声でお喋りしてきた!


「あっ、おはようございます」

「この鳥、話せるんだ」


 わたしにだけ聴こえる声ではなく、文鳥や九官鳥みたいにお話するんだね。


「珍しい色の小鳥でしょう? ケツァールという種類の親戚だそうですよ。ただし、その子には特別な魔法をかけてありますがね」


 ――えっ?

 突然どこからか、渋い低めの声がした。


「誰だ!」

「だっ、だれ?」

「どこにいる?」


 カラフルな小鳥がみるみる姿を変えていく。


「わあっ、すごい」

「きゃあっ!」

「「ド、ドラゴン!」」


 小鳥はミニドラゴンに変わって、口から銀色の炎を吐いた。

 すると炎の中から、顔を映せるぐらいの鏡が現れた。

 姿見よりは小さめなの。


 そこから小人のおじいちゃんが出てくる。

 学園の魔法のローブを着て、白いたっぷりのひげをたくわえたおじいちゃん。


「わしが、学園長のギュリトスじゃ」

「ひゃあっ」

「これが学園長……」

「はじめまして、王女ミャア様付き騎士団の副団長ソラです」

「はじめまして、ミャアです」


 テーブルの上の学園長先生は、わたしの手に乗るんじゃないかなあってサイズ。


「わしは小人族の魔法使いじゃからのう、大きくもなれるんじゃっ。ほれっ」


 学園長先生が魔法の杖をひと振りすると黄色い光が現れ、先生の体が大きくなった!


「「わあっ!」」

「おっ」

「きゃっ」


 ギュリトス学園長先生はチャーミングにウインクをしてから、私たちみんなをまんべんなく眺めたあとで、楽しそうに笑う。


「ほれっ、瞬く間にお主たちとおんなじ大きさじゃぞ。フォッフォッフォッ。子供たちをびっくり魔法で驚かすのは、いつでも楽しいのう。さあ皆のものよ、椅子に座りなさい」


 椅子に?

 学園長先生の部屋には椅子らしきものはない。


「椅子なんてないじゃねえか、ジイさん」

「ちょっ、ちょっとライアン。ジイさんだなんて。仮にもこれから僕たちが魔法や剣を習う学園の長、お世話になるギュリトス先生だよ?」

「呼び名は好きに呼びなさい。フハハハッ、わしはジイさんでも構わんよ、ライアンさん。わしはたいそうなもんじゃない」

「なっ? ジイさんもこう言ってんじゃんか」

「ライアン。師には敬意を払うべきだよ。前にお父様が言ってたもん」

「フォッフォッ。ミャアさん、国王は息災かね?」

「はいっ! お父様はすこぶる元気ですっ!」


 ギュリトス学園長先生はほがらかに笑う。


「元気な返事じゃのう。よろしい。皆、元気で健康がなによりじゃ。……はて、キノコが生えてきおったのう」


 学園長室に大きなキノコがニョキニョキ生えてきて、ちょうど人数分の椅子みたいに。


「なかなかの座り心地じゃ。皆のものよ、着席なさい」


 皆はキノコの椅子におそるおそる見たりツンツン触ったりしながら座るけれど、わたしは躊躇ためらいなくポンッて座ってみる。


「やわらか〜い」

「フォッフォッ、キノコの椅子もなかなかじゃろう?」

「な、なんかあったかいです」

「……」


 ソラとローズは、苦笑いをしていてちょっとイヤそうだなあ。


「食えんのか、これ?」


 ライアンが言ったら、皆がいっせいに笑った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

恋した白猫ミャアは、異世界転生して魔王になったご主人さまを助けるために大賢者を目指すんだニャン!? 天雪桃那花(あまゆきもなか) @MOMOMOCHIHARE

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ