蜜月
「おれたち、結婚して十年経つけど、一つだけわからないことがある」
ケイさんが真剣な顔をして言った。ミカさんは少しだけ身構える。
「どうしてパジャマの下になにも着ない」
ミカさんは天空の城ラピュタのムスカ大佐を降霊させる。
「ハハハハ。逆に尋ねるが、いったいなにを着るというのかね」
「肌着」
「えっ」
瞬時にしてムスカ大佐がミカさんから霧散していく。
「はだ、肌着?」
確かに息子には着せているけれど、自分は着たくないのだ! ミカさんはうなった。
なぜなら、肌着というのは体にピッタリしている。
『フン、そう簡単にオフトゥン(布団)との蜜月を許すと思ったの? この泥棒猫が!』
と肌着に言われているような気がする。対して、ノー肌着の場合
『ささ、どうぞ! オフトゥン(布団)の温もりですよ。わたくしめがサポートいたします!』
とパジャマは布団との仲を取り持ってくれているような気がするのだ。
「——そういう訳で、パジャマの下にはなにも着たくないの」
「……わかった。じゃあ寝る時、なんで窓開けて寝るの?」
「台風の時は閉めてるよ」
「冬は寒いじゃん」
ミカさんは、窓を開けて寝たい。全開じゃなくていい。一センチほど開けていたい。風が通っていないと、気持ちが悪いのだ。
「たぶん、苦しいから」
「魚か!」
さすがに窓を開けて寝るのは申し訳ないと思い、ミカさんは窓を閉めて寝てみることにした。
意外と問題なく眠れた。
けれども肌着はだめだった。
やはり冬のオフトゥンには包まれて眠りたいのだ。
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