ミカさん、家にいる

「みなさん、お菓子は持ちましたか?」

「もちましたー!」

「リプトン紙パックティーは買いましたか?」

「かいましたー!」

「ストローはもらいましたか?」

「わすれましたー!」

「仕方がありません、長いストローを切って使いましょう」

「ナイスアイディアー!」

「ついでに、パソコンの調子はどうですか?」

「まあまあです!」

「よろしい、では始めましょう──」




 ──在宅勤務を!!




 

 ミカさんは、初めて在宅勤務をする。

 事前準備はバッチリ。

 勤務開始メールを『在宅勤務はじめました』と『冷やし中華はじめました』と同様のテンションで送信してしまったが、問題ないだろう。たぶん。



 飲み物をパソコンの横に置き、持ち帰った仕事をする。



 サクサクと仕事が進む。

 まだ一時間も経っていないのに、仕事が進む。

 話しかけられることや、奇声に気を取られること、電話対応がないだけで、こんなに集中できるなんて!!



 ミカさんは感動して、前日に用意していたチョコを食べた。



 再び、仕事に戻る。

 このままのスピードでいけば、予定していた仕事が午前中に終わってしまう。

 


 在宅勤務って素晴らしい!!



 ミカさんは感動して、ソルトクッキーを食べた。甘いもののあとは、塩っぱいものだ。



 職場にいかなければ出来ない仕事もあるが、在宅勤務で細々とした仕事がスルスル終わってしまうのなら、在宅ハッピーである。




 ずっと家にいるのはごめんだが、たまには在宅勤務もいいではないか! 



 ミカさんは感動して、ポッキーを食べた。集中した後はやはりチョコなのだ。




「待ちたまえ」


 脳内で小さなミカさんが呼び止める。


「食べ過ぎだ!」

「おデブになるわよ!」

「しかも、服装が部屋着だ」

「外に出ないとダメになるタイプよ、あなた」



 ──ぐぬぅ……。


 ミカさんはうめき声をあげた。

 

 ──言い返せぬ……。

 ──たしかにこのままでは、ぷとってしまう!



「なんくるないさ~」



 静まる脳内会議。

 ミカさんが脳内で飼っている(おそらく沖縄の)おばあが、よっこいせと登場した。



「楽しい気持ちで食べれば、ぜんっぜん、太らないさ〜」



 ──おばあ!!



「太っても運動すれば、オールオッケーさ〜」



 ──だよね!



 ミカさんは、ビーバーのごとくポッキーをほおばる。



 仕事がすすんで、楽しくて、おいしければ、毎日それだけでいいじゃないか!










 夜、ミカさんは恐る恐る体重計に乗るのであった。

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