第45話
「——
黒い泥を風で押し返す。
その押し返されたヘドロは部屋の壁、床をドロドロに溶かしていく。
ダンジョンの壁を溶かすってどんだけ強い酸なんだよ……。流石に触りたくはないな。
バケモノが反撃とばかりに繰り出した触腕を避け、
「——
あいつの子どもをドロドロに溶かした魔法を同じくこのバケモノにも撃ち込む。
「qwaaaaaaaaaa!」
バケモノの振った触腕によって魔法が相殺される。
一応、触腕に当たっていたので溶けるかな?と思ったがほとんど無傷で意味を成していなかった。それならばと別の魔法を起動する。
「押し潰されろ、——
二倍、四倍、八倍と重力を累乗していく。じわじわとバケモノの体が薄くなっていく。
“何が起きてんの????”
“当然のように魔法を撃つな。まず、説明をくれ”
“察しろ”
“色々凄いってばよ”
“もう実質タイマンで渡り合ってて草”
“陸くんとか、海くんも攻撃してるんだけど、色々と天くんが壊れているせいで目立たないんだよね……”
「qwaa——!」
バケモノの体が潰れてぺしゃんこになったと思った瞬間、重力に逆らいバネのように元の大きさに戻った。
「なんでもありかよ……」
“天くんも何でもありじゃんw”
“やばい、強すぎん?でもなんか頂上決戦みたいでワクワクしてる”
ただ、あいつには隙ができていた。攻め時は見逃さないとばかりにここで畳み掛ける。
「六属性複合魔法——裁きの礫」
聖と闇を除く風・氷・土・電気・火・水の六つの属性の複合魔法。魔王を倒すときには使わなかったがこれは僕が常時撃てる魔法の中では最大火力だ。
世界が真っ白に染め上げられ、ダンジョンに衝撃波が走り、風が吹き荒れる。
“なんかSUGEEEEE!”
“天くん最強!天くん最強!”
“流石にやっただろ”
“やったか?”
“おいおい、それはフラグだって……まぁ流石に倒せてそうだけどw”
“お前らフラグ建てすぎだからw”
「おいおい、本当かよ……?」
そこには体に半分が抉れて消し飛んだバケモノがいた。決して無事とは言えない姿だが倒れることなくその場に立っていた。そしてその抉れた体も再生されて元通りになっていく。
“なんで耐えてるんですか???”
“ひょっとして俺らがフラグ建てたせい?そうだとすると腹を切るしかないんですが?”
“バケモノは天くん以上に化け物をやっていたってことか……。まぁ、そうか……、そうじゃなかったらダンジョンごと封鎖とかならないもんな……”
“回復能力こいつチートすぎるだろ……”
「qwaaa! qwaaa! qwaaa!」
バケモノは僕の魔法に怒ったような声を上げて、触腕を地面に叩きつけた。
次の瞬間、目の前のダンジョンの床から泥の槍のようなものが突き出され、それが部屋中にランダムに出始めた。
魔力の波長を読み、空くんたちやカメラマンさんの方に行きそうな時はそれを防ぎにいく。
これに対して防ぐのが精一杯で、僕たちにはもうなす術がないと判断したのか何故だか勝ち誇ったような声を上げている。
随分と耳障りな高笑いだな……。黙れよとばかりに空いている左手で斬撃を飛ばすと急にバケモノは体から無数の触腕を突き出した。
僕と陸くんの剣をすり抜けるように触腕が空くんと海くんのもとに向かう。
僕は今、カメラマンさんの側。剣は地面から突き出した槍を斬り飛ばしている。左手で攻撃を防げても一人。つまり片方は間に合わない。それが表すのは仲間の死……。
迷っている暇はなかった。条件反射で僕は咄嗟に最後の手をここで切った。
「——
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次回更新は明日もしくは明後日です。
残り多分二話?
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