第42話

 そんなことを逡巡している間にいつの間にか奴らは近付いてきていた。


「前から二体来る」


 戦いながらどうするかは考えればいいかと僕は大人しく分身を戻して姿を表した不死竜に斬りかかる。


 確かに斬っている感覚はあるのだが、全くもって傷が付いていない。


 痛みも感じていないようで平気な顔をして、骨格しかないので表情は分からないが、腕を振ってくる。躱しながら周りの様子を見る。


 陸くんの剣も、海くんの魔法も、空くんの弓も全くもって効かないのは同じなようで誰一人として対策がないようだった。


“全くダメージ入ってないんだが?”

“固すぎね?”

“ひょっとして、今ヤバい状況?”

“硬いんじゃない。こいつらは多分アンデッド系……対策方法が聖魔法を纏わせた剣で斬るか、聖魔法を直接当てるくらいしかないから対策なしで出会ったら撤退が鉄則のはず……”

“ま?それじゃあ本当にヤバいじゃん……取り敢えず一旦逃げてくれ〜。相性が悪すぎる……”

“災厄となるとレベルが違うんだな……”

“ここで終わるの?”

“こんな詰みモンスター用意したの誰だよ……。謝ってくれ……”


 不死竜の尻尾攻撃を防ぎながらお互いに顔を見合わせる。


「一旦、撤退して消えるの待つ?」


 海くんの提案を僕は却下する。


「いや、……後ろからも来てる」

「マジで?」


 先程から僕たちを囲むようにしていた不死竜がじわじわと集まってきている。既に退路は塞がれている。


 こうなってくると僕がやるしかないか……。ちょっと輝くくらいだったら回復魔法の応用とでも言えば誤魔化せるよね?うん、誤魔化せる。


 覚悟を決めて詠唱する。


「聖魔法——浄化の光」


 目の前が眩い光に包まれる。予想以上の眩しさに少し顔を顰める。


“なに急に?”

“うわぁぁぁぁ!○が、○がぁぁぁぁ”

“某大佐いて草”


 光が収まると同時に不死竜が地に倒れ、ダンジョンに喰われていく。


 唖然とした顔を向けられる。


「……何?今の?」

「回復魔法の応用で……、ちょっとね」

「なるほどね……、いや僕はもう何も言わないよ」


 誤魔化せたのか陸くんがそれ以上余計な追求をしてくることはなかった。


“パーティーメンバーがもう理解をするのを諦めてるの草”

“もう俺も驚かなくなった”

“このチーターがよ……”

“回復魔法の応用っていっても、回復術師が攻撃手段を持ってるのヤバすぎるのよ”

“明らかに聖魔法な気が……”

“おかしいな……。聖魔法で倒せるのはアンデッド系の雑魚敵だけのはずなんだが……。竜種だからそっとやちょっとの火力じゃ倒せないはずなのになんで一撃?”

“剣も剣士顔負けレベルでしょ……。逆に天くんに出来ないことが何か気になる”

“解:ない”

“もう回復術師やめて魔剣士名乗れ”


 制限が一つ外れた僕は続々と不死竜を屠り、無事に四階層に辿り着いた。


 あっちの世界でも見たことがない、今までにないサイズの扉。心なしか装飾も荘厳な気がした。


 かつて、僕たちの両親もここまで辿り着き、この部屋の中で散っていった。


「遂にか……」


 四人全員で目配せを交わす。


「泣いても笑っても最後だね……。準備はいいね?行くよ!」


 深呼吸をしてその陸くんの言葉とともにボス部屋、僕たちはあのバケモノのいる部屋のドアを開け放ち、先制攻撃を仕掛けようとした。


 ただその瞬間、僕たちは部屋の中の様子を見て、思わず動揺の声を上げてしまった……。




———————————————


かなり短めですが、キリがいいので……。次回の更新は月曜日の予定です。

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