第41話

 黒竜を難なく突破した僕たちはその後、モンスターと一切エンカウントすることなく進んだ。


 正確には本来であれば百匹ではきかない量のモンスターと遭遇する予定だったが、僕が分身を飛ばして予め全員斬り殺しておいた。


 そうして無事に無駄な魔力を消費することなく三回層に進み、四階層にアイツはいる。あと少しで……。そう少し勇み足になりかけたところで僕は突然明確な違和感を覚えた。


 ……明らかに異常な量の魔力がこの空間にだけ溢れていた。


 違和感を抱いたのは他の四人も同じなようで全員顔を顰めていて、カメラマン役を務めている女性の方は空気の魔力含有量のあまりの多さに吐きそうになっていた。


 体の限界を超える量の魔力は体にとって毒になる。なんでこんなに魔力が溢れている?七年前はなかったのに……という疑問もさながら取り敢えず魔法を使う。


「——状態異常回復、——魔力吸収」


 僕の起動した魔法で気分がスッキリしたのか、カメラマンの女性に軽くありがとうございますと頭を下げられた。


 陸くんが僕の使った魔法に興味を持ったのかじぃっと僕を見てくる。


「天くん、今使った魔力吸収って何?」

「文字通り魔力を体に吸収する魔法。空気中の魔力が減って多分、大分空気すっきりしたでしょ」

「なるほどね……。魔力って体に取り込んでも大丈夫なの?昏睡状態になったりしない?」


 ダンジョン病になることを心配しているのか。


「ダンジョンに宿主に選ばれない限りは大丈夫」


 気持ち悪くはなるけど。


 ふぅ〜ん、やっぱり万能だね〜と少し呆れたような声を出しながら探索を再開する。


“何気に『銀河の蜿』の配信で初めて回復魔法見たわ。天くんって本当に回復術師なんやね”

“草”

“ごめん。説明がよく分からん。魔力を吸収っていう文字面は分かるんだけど理解できない。そんなこと出来なくないか?”

“考えるな。思考なんて放棄してそれが事実だと思い込め”

“常識が通じないのは仕方ないからね()”

“いつも通り定期”


 しばらくして僕が起動していた探知魔法サーチにモンスターが引っかかったので分身に遠隔で斬撃を飛ばさせる。


 ただ、そのモンスターは確かに攻撃を食らったはずなのに倒れなかった。


 驚きながら分身に意識を集中させる。そこにいたのは……


「不死竜……?」

 

 ——不死竜、それは虹竜という竜種の中でも最強格の個体の体が朽ち果て、骨だけとなった竜。寿命という概念を破壊した自然の理に背きかけている存在のアンデッドの一匹。


 ただ明らかにおかしい。両親たちが潜ったときはこの階層で出たのは蒼竜と蒼竜の強化版、紅竜だけだったのに……。


 以上のことから考えられるのは……。


「まさか、イレギュラー……?」


 付近の魔力を探知で探る。


 同じような魔力がぐるりと僕たちを囲むように多数。


 嘘だろ……。なんでこんなにうじゃうじゃいるんだ?まさか、ここの膨大な魔力を吸って強くなったのか?ダンジョンが封鎖されていた弊害か……。


 小さく舌打ちをしたくなったのを堪えて対策を考える。


 不死竜は名前の通り、通常攻撃では死なない。


 魔力を込めて、それも聖魔法の魔力を込めて成仏させない限り、彼らには全くもってダメージにならない。


 それなら聖魔法を使えばいいだろという話なんだが……、僕がこういう魔法を使っても大丈夫なのだろうか?一応、回復術師なんだが……。




———————————————


更新遅れて申し訳ありません。

期末試験終わった(二つの意味で)ので更新頻度戻していきます。(まぁ、そろそろ完結(仮)なんですけどね)

次回更新は明日もしくは明後日。

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