第39話
「陸くん!」
陸くんが剣で防ぎきれずにあいつの振るった触腕に腹を突き刺される。僕が回復魔法を飛ばすも間に合わずに息絶えてしまう。既に空くんと海くんの二人も倒れてしまっていて、残されたのは僕一人だ。
「クソがよ……」
なんでまた形は違えど、仲間を失わなきゃいけないんだよ……。もう二度と見たくないと思っていたのに……。
それから急に時間が飛び、僕はバケモノの触腕に体を掴まれていた。締め付けの強くなる触腕。僕の全身の骨がギシギシと悲鳴を上げる。
「ガハッ……、ゴホッ……」
吐血をするも魔力切れのため治せない。ごめん……、美玖、奏多……。もうダメみたいだ……。
「!はぁ……はぁ……」
そこで意識が急速に現実に引き戻される。体をガバリと勢いよく起こすと、雲一つない晴天に呑気な雀の鳴き声が聞こえてくる。
夢だったのか……。
シャツが汗で湿り、皮膚に引っ付いていた。気持ち悪いな……。シャワーを浴びて、体を軽く流す。
「なんで、当日にこんな夢を見るんだよ……。不吉すぎるだろ……」
せっかく上手くいくことを予感させるような心地良いまでの快晴なのに。
魔法で気分をリフレッシュさせるとともに、もし夢で見た時のようになったときのために僕の体にとある魔法をかけておく。
「頑張れ、僕」
軽く頬を叩いて寮を出る。
予め四人の集合地点として決めておいた場所からバスに乗り、“災厄”のダンジョン前に向かう。
このバスの中では誰もが終始無言だった。心地の良い緊張感を味わう。
そして、“災厄”のダンジョン前に着いてみれば、そこは野次馬や、テレビ局関連の人などで埋め尽くされていた。
「こんなに人がいるのは初めて見たよ……。休日昼間の渋谷くらい人がいるんじゃないか?」
海くんの言った昼間の新宿というのがどれくらいか数字は分からないが、間違いなく大都市の人口レベルで人が集まっている。
バスから降りて雰囲気に気圧され身動きの取れなくなってしまった僕たちの元にこの前の協会長が寄ってくる。
「『銀河の蜿』の皆さん、おはようございます。今日はよろしくお願い致します」
こちらですと先導していく協会長に着いて行き、国営テレビのカメラマンさんと合流した。
そこにいたのは顔見知りの人だった。
「あれ?あの時の?」
「久しぶりだね。ダンジョン暴走の時はありがとう」
あのとき助けた『混沌の光』の女性の方だった。
「国営テレビのカメラマンさんだったんですか?」
「いやいや、まさか。潜るところが潜るところだからね。それなりの実力がないと守ってもらってばっかりで上野くんたちの攻略の足を引っ張るところになるだろうってことで呼ばれたんだ。……正直、上野くんたちとは実力が一段、二段劣ると思うがよろしく頼む」
差し出された手をしっかりと握り返す。
「カメラ映りとかは気にせずに本気で戦ってきてください。それと危険だと感じたら迷わず撤退してください。……無闇矢鱈と若い芽を摘むわけにはいきませんので。それではご武運を」
「……ええ、心得ておきます。それでは行ってきます」
その協会長の言葉に見送られるように、僕たちはお互いに頷き合うと薄暗い“災厄”のダンジョンに足を踏み入れた……。
“うぉぉぉぉ!始まったぁぁぁぁ!”
“マジで行くのか……、ポーズだと思ってた……”
“頑張ってくれ〜”
中に入ってまず感じたことは腐臭が漂っているということだった。動画では感じ取れなかったことだ。
シンプルに臭くて集中できない。陸くんたちも同意見らしく顔を顰めているので魔法で空気を清浄化する。
これで戦闘中も心置きなく鼻呼吸が出来るなと思った瞬間だった。
僕たちが進みたい方向から多数のモンスターが接近してくる足音が聞こえてきた……。
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文字数少ないですが、明日頑張って更新目指しますので……。(出来なかったら月曜日)
新宿と渋谷、原宿、池袋ってどこが一番人が多いんでしょうね?
それと配信じゃなくてテレビなのでどうやって視聴者の気持ちを届けるか……。悩みどころです……。
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