第36話
暗黒亀、先程は大きさのみにしか触れられなかったが、その最たる特徴がもう一つある。それは驚異的な生命力だ。
亀が生物的に持つ固さそして治癒能力が合わさることで生まれるシナジーによって普通のパーティーでは苦戦は必至だろう。
“でかすぎんだろ”
“確かに面白いモンスターだ()”
「じゃあ、こいつで練習しようか」
「やっぱりこんだけ大きいと当てがいのある的だからちょうど良さそうだな」
“当てがいのある的()”
“ボスモンスターを玩具みたいに……”
“実際そうだろ。というか練習必要ないだろ。適当に武器振り回してるだけでぶっ壊れやん”
「じゃあ、僕と天くんとであいつの注意引くから、隙を縫ってあいつのこと攻撃して」
「オーケイ」
「……分かった」
味方の攻撃に当たらないようにね～と普通の大きさの声で言われたあと、ちゃんと力をセーブしてねと静かに念を押される。
そう言われたからにはしっかりと動きを合わせていく。モンスターの右側を攻撃する陸くんと全く同じ動きをする。
僕たちの攻撃に呻き声をあげる暗黒亀。バタバタと抵抗してくるがやはり大きいだけで所詮は亀。動きも遅く容易に躱すことができる。
“親の顔よりよく見たリンチ”
“それな”
“お前ら、産んでくれた母親に謝れ”
“父親にもな”
“そんなことよりなんでこんな安定感あるんだよ……。初めてなの本当？”
しばらく適当に斬っていたが飽きが来たのか陸くんが後退する。
「まぁ、本気を出せないとあんまり意味もない気がするし、そろそろ終わりにしようか」
「おっ、じゃあ最大火力で燃やしていい？」
「ごめん。海くん。今回は初回だし天くんにやってもらおうと思っててさ」
ド派手に思いっきりやっていいよと耳元で囁かれる。ド派手に思いっきりか……。それならあれか……。
ちょっと攻撃防いどいてくれと頼んで肩と首を軽く回す。
体に軽く身体能力強化を付与して剣を鞘に入れ、見様見真似で僕に剣術を教えてくれた人の構えをする。最後まで腰が高い！とか目線を合わせろ！とか言われたなぁ……なんて思いながら精神を研ぎ澄まし、鞘に入れた剣を静かに掴み放つ。
僕が使える数少ないド派手な剣技の一つを。
「一刀流奥義——流鏑馬」
刹那に剣を振り抜いた次の瞬間には僕は暗黒亀の背後に立っていた。ダンジョンの壁がズガガガガといい音を立ててえぐれていく。
その数秒後、暗黒亀の体は上と下の真っ二つに裂けた。ドシーンと地に落ちる音が周囲に響き渡る。
「ふぅ……」
正直、タメ時間が必要だったり、ここまで破壊力が必要のない敵が多かったので使うことがなかった。実際強敵と当たった際はタメ時間などくれないので、魔王と戦ったときも使うことがなかった。
というか上下に裂けるって親に仲良く半分に分けるのよと言われたケーキを意地の悪いお兄ちゃんが切ったケーキみたいだななんてくだらないことを考えていると周りが静かなことに気付いた。
三人とも僕のことを変な目で見てくる。
“はっ？”
“ナニガオキタノ？？？”
“何か斬れてる”
“語彙力壊れちゃった”
“ファァーーwwwww”
“取り敢えず叫んどけ精神”
“もう天くん剣士やれよ”
“実は剣士説”
“というか破壊力ぶっ壊れすぎて回復術師要素を全くもって感じなかった”
“そもそも今日回復してない気が……”
“確かに……。まさか……おっと誰か来たようだ”
「うーん、これはまた……」
少し静かに唸り出した陸くんが僕の肩に手を置く。
「剣士と回復術師変わる？」
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更新頑張ります。明日から本気出す（某ラノベ風）
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