第35話
翌々日、僕は陸さんたちに連れられてとあるダンジョンの前にいた。
「じゃあ、始めようか。お願いします」
陸さんのその声とともにカメラマンさんが配信を開始するのを僕は後ろから覗き込む。
「どうも!『銀河の蜿』の陸です」
「海です!」
「空です……」
“久しぶり”
“待ってた”
チャンネル登録者数五百五十万人。ダンジョン探索者としては最大手に君臨する『銀河の蜿』。チャット欄が平和なことに僕は安堵の息を漏らしながらもその上に映る七万人という数字に少し胃が痛くなる。
あっちの世界では感じなかった緊張だ。人数的には魔王軍四天王を倒した時の凱旋式の人数の十分の一くらいのはずなのに。
最悪、何かやらかしたとしても
最終的にやらかしたとしても逃げればいいやと半ば投げやりに踏ん切りをつける。
「今回もダンジョンに潜っていくんですけど、最初にお知らせがあります」
“おっ?”
“何?”
「新メンバーの紹介です!」
“おお、遂にか”
“三人って微妙な数字だったしな”
“言うて必要か?要らん希ガス。三人で十分じゃね?”
「僕が言うのもあれですが、凄いですよ」
そんなことを言われると忘れようとしていた緊張が俄かに芽を出す。
「それではどうぞ!」
手招きをされた僕は慌ててカメラの前に姿を現す。
「どうもはじめまして。上野天です」
“あっ、あのときの……”
“『混沌の光』をダンジョン暴走から救った意味分からん回復術師やんwww”
“まさかの方ご登場wwwこれから、楽しみやな”
“ん?上野……ってことはまさかこれで伝説が揃ったのか?”
「これからこの四人で活動していこうと思うのでよろしくお願いします」
「お願いします」
じゃあ早速潜っていこうかという陸さんの声とともに僕たち四人はダンジョンに足を踏み入れた。
それから三十分後、コメント欄は湧きに湧いていた。
“天くん強すぎん?”
“あの切り抜きで見たけどやっぱりイカれてる”
“陸くん、空くん、海くんも規格外が服を着て歩いている感あったけどこいつも同類だった”
“回復術師である分、職業補正で負けてるんだから天くんの方が規格外説”
陸さん……いや陸くんに言われてなんとなく梅雨払いをしていただけだ。
具体的には目の前に現れるモンスターをスパスパ斬っていった。こうしている間は無心になれて良かった。
「次からは五大ダンジョンくらいにしないとダメだね……。連携の練習にならない……」
やり過ぎと陸くんにため息を吐かれたが。
「まぁ、ダンジョンボスで練習すればいいでしょ。ボス“あいつ”だし」
“ダンジョンボスで練習www”
“他の探索者が言うとこいつ死んだなって思うんだけど海くんが言うとそれが当たり前に感じられる。割と真面目に手品”
その後、魔法の試し打ちしたいから変わってくれと言われた僕は後方から空くん、海くんの攻撃を見ていた。やっぱり何度見ても勇者パを思い出す。そしてあの最後も——僕は悪いことを考えそうになって頭を横に振り払う。
そして一時間後、特に何事もなく無事にボス部屋の前についた。そこで陸くんに中にいるのは面白いモンスターだから力を制御しながら戦ってくれと言われた。
面白いモンスター?なんだそれと思いながら、開けたボス部屋の中にいたのは——
「暗黒亀?」
ボス部屋の半分ほどを占める黒い亀だった。
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『銀河の蜿』の三人の名前を混合して使ってしまっていたため、三十話に改稿いれました。
それと鬱病悪化しました。しんどいので、十万文字完結は一回諦めて更新します。
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