第33話
翌日、僕が教室に入ろうとすると何やら騒いでいる声が聞こえてきた。扉の隙間から覗く。そこでは何故か加奈と西野さんが何やら言い争っていた。
「お願い、西野さん。天くんと別れてくれない?天くんが私と付き合ってくれないのはあなたがいるからだと思うの」
「……いきなり何なんですか?意味が分かりませんよ……。それに上野くんと私には何にも関係がなくて……、あくまでも私の一方通行というか……」
「それがダメなの!私にはどうしても天くんが必要なの!だから返して!」
僕は反省してくれと言ったのだが?思いっきり西野さんに迷惑をかけている時点でアウトだ。昨日、情に流されなくてよかったと思う。
わざとガラリと音を立ててドアを開ける。
二人はほぼ同時に僕の方を見てくる。
「天くん!」
「上野くん!」
加奈は僕の元に駆け寄ってくるとお願い……と開口一番に言ってくるがそんなのは無視した。
僕の今抱いている感情をここで言うわけにもいかないので僕は加奈を有無すら言わせず追い返す。
面倒だな……と溜め息を吐いた僕に暗い表情の西野さんが肩を叩いてくる。
「あの、上野くん……」
「ん?何?西野さん」
「あの……私って何なのかな?」
「……」
いきなり何なんでしょうか?
「橋下さんに言われて不安になったの……。私って上野くんにとって何なのかなって」
今にも泣きそうな顔を見せてくる。それを見て僕は俄かに焦りだす。
「ちょっ、ちょっと待って。ここで泣かれたら僕、完全に悪役だから。二股やって泣かせてるクズにしか見えないから」
「……じゃあ、一つだけお願い聞いてくれたら泣き止むよ」
「なんでもどうぞ」
「私のことも下の名前で呼んで。奏多って。私もその……天くんって呼ぶから…」
「それくらいならいくらでも。……奏多」
予想以上に簡単なことを言われていくらでもと言ったけれど普通に少し恥ずかしく、奏多も顔を赤く染めていた。
この名前呼びのおかげで僕たち二人の距離が少し前より近づいた気がした。
その日の夜。
僕の部屋のドアが静かに開き、一人の影が部屋の中に、そしてベッドの掛け布団の膨らみに——
「はいストップ〜」
「!」
背後から突然声をかけられた侵入者はその場で跳ね上がった。
「やっぱり来たんだね、加奈」
別に呼んでいたわけではない。ただ、結界を張っていてもいつも僕の部屋の近くに来るので今日はそれを外した上で鍵を開けておいただけだ。
加奈は動揺してはいるも、先程失敗した行為を、僕との既成事実を作ろうと押し倒そうとしてきた。
僕は逆にそれを力で抑え込む。
「僕は反省してって言ったよね、昨日。それなのに今日だけでもう二回だよ。流石に許さない」
「……嫌だ嫌だ!やめて!お願い!ねぇ、本当の本当に一生のお願いだから!」
僕の強い意志を感じ取ったのかさらに騒ぎ立てる。
「駄々をこねるのもやめてくれ。もう絶対に助ける気はないから。一生、僕と西野さんと如何なる方法をもっても接触できなくなるように、そして助ける人もいなくなるように魔法をかける」
この言葉と同時に思考誘導を使うとどうなるのか?
答えは否が応でもこれを信じてしまうということ。別に信じてもらわなくても、近付けないように呪いはかけるけどさ。
「それじゃあ一人で頑張ってね」
ちょっと待って!天くん!と叫んでいる加奈のことなど無視して部屋に
これで終わりか…‥スッキリしたな。
———————————————
上野くん、異世界に行ったにも関わらず女性に対する対応……。
加奈さんの出番おそらく終わりです。
明日は更新出来なさそうなので月曜日の更新となります。
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