第23話
俺は思いついた後、それをすぐに実行に移そうとした。ただ、少し堪えて俺はその機会を慎重に窺った。あの無能の隣りにいるときは無理だ。あいつにあの卑怯な目を向けられたら俺は動けなくなってしまうから。
そしてそれから約一週間の経ったとある曇りの日、俺は近くに誰もいないことを確認してから学園の校舎の廊下を一人で歩いていた西野に背後から奇襲をかけた。正直なところ、ダンジョン内で戦った時は余裕で勝てたので正面から突っ込んでも良かったのだが叫ばれたり抵抗されたりしたら誰かに見つかる可能性があった。
とにかくそのおかげで西野は特に何の抵抗もできずに俺の手刀で眠らされた。俺は誰にも見つからないように気を付けながら西野を自室に運び込んだ。
ベッドの上に横たわらせると、逃げられないように腕を縛り、ベッドの端の部分に繋ぐ。それと撮影用のスマホと。今後、脅すようにしっかり録画はしておかなきゃな。
あとは西野が目を覚ますのを待つだけだった。西野が目を覚ますのを待つ時間はカップラーメンができるまでの時間とほとんど変わらなかったのにやけに長く感じた。
「えっ?九条くん……?なんでここに?というよりここは?腕が動かない……?どういうこと?九条くん、今すぐほどいて!」
西野が目覚めた瞬間、俺は思わず小躍りをしたくなった。その興奮をポーカーフェイスの下に仕舞い込む。
「わざわざ結んだのにほどくはずがないだろ。というか騒がれると面倒だな」
俺は近くにあった服を西野の口に噛ませたうえで巻き付けて猿轡のようにする。
俺がほどくつもりがないということが分かったようで足を動かし抵抗しようとしてくる。それを俺は西野の足の上に乗ることで抑え込む。
「んーん、んーーーー」
「何言ってるか分かんないなw まぁ、大方やめてとかなんだか言っているんだろうけど何かを言ったところでやることは変わらないんだけどな」
自分で言うのもなんだがこれからやることに思いを馳せ始めるとポーカーフェイスなんてものは保てず、ニヤニヤと下卑た笑みを浮かべてしまった。
そんな俺を見て、西野はこれから行われることを想像したのか涙を流し始めた。
「恨むんなら無能の分際で俺に逆らったあいつを恨むんだな」
上野、ざまぁwww
そうして西野のその豊かに実った二つの果実に手を伸ばした瞬間だった。
「——斬れろ」
「……はっ?」
その予想だにしなかった声と同時に俺の右肩がじんわりと熱くなる。
右腕に目を向けると——そこには何もなかった。血があり得ない勢いで流れ出ているのと綺麗に切り落とされた右腕が地面に落ちているだけで。それを認識すると同時に俺を凄まじい痛みが襲う。
「うわああああ、俺の腕がぁぁぁl!」
「うるさいなぁ……静かにしろよ。——
尋常ではない不機嫌そうな声によって俺の腕の断裂面が凍り、湯水のように流れ出ていた血が止まる。ただ痛みが止まることはない。
俺は今となって乱入者の顔を見る。
「うう、なんでっ……上野が」
部屋の鍵は閉めておいたはずなのに……。それにこんな魔法を、なんで……。
そんな俺の疑問になど目もくれずに上野は痛みで脂汗を流している俺の体を西野の上から強引に引きずりおろした。その衝撃で体が悲鳴を上げる。
「というか西野さんの拘束をまず解かないとね。——斬れろ」
その声と同時に西野を拘束していた縄と猿轡が切り落とされる。動けるようになった西野は上野に抱き着いた。
「……はぁはぁ……上野くん!……でもなんで上野くんが……」
「いや、ちょっとね……。まぁ、そんなことより害虫駆除の時間といこうか」
その言葉を聞いた瞬間、上野にあの恐ろしいほど冷え切った目を向けられた瞬間、俺の背中を何か冷たいものが猛烈な勢いで這っていった。
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次回、九条〇〇!(おそらく)
更新頑張れ、僕。
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