第22話
闘技場から出ると西野さんと加奈が待ち構えていた。
加奈が僕におめでとう!カッコよかったよ〜と抱きついてこようとしたのを避けて西野さんに向かい合う。
「それじゃあ、終わりにしようか……。全部話すよ」
とはいっても……
「流石にここは目立つから一旦移動しようか」
西野さんと加奈以外にも人がいたので僕たちは校舎裏に移動した。
何故か付いて来ようとした名前も分からない生徒たちには魔法をかけて自室に回れ右をさせた。
僕は付近に誰もいないことを確かめてから、一応僕と西野さんにしかこの話が聞こえないように防音魔法を展開して話を切り出す。
「いきなりで申し訳ないけど、今から加奈にかけてた魔法を解こうと思う。そのほうが今の事態を理解しやすくなるだろうし」
「魔法……?」
「ああ、西野さんも感じてたでしょ。加奈の様子が明らかにおかしかったこと」
そうだから僕に気になって夜も眠れないと言ってきたんだろうし。
「まぁ、うん……」
「あれ、全部僕のせい。九条に拒絶反応示したと思ったら、一旦九条とくっついて、最終的には僕にベタベタになったところまで」
「なるほどね……」
その場で一人キョトンとしている加奈に目を向ける西野さん。僕も西野さんに釣られて加奈に目を向けると目が合った~と言って抱き着いて来ようとする。
「もう気持ち悪いから離れてくれ。——
「ううん……。えっ?天くんに西野さん?なんで……。きゃああ!男の人!うう……」
「えっ?橋下さん大丈夫?」
西野さんは自分を殺そうとした相手にも関わらず、あまりの動転さに心配になったらしく加奈を介抱しに行った。
「大丈夫。それ僕が記憶を戻しただけだから」
記憶を戻したといっても、僕が彼女に
「まぁ、放っておけば多分勝手にどこか行くよ」
「多分……」
面倒なので加奈を魔法で強制的に立ち上がらせて保健室に走らせる。もちろん、僕と西野さんと会っていた記憶は消した上でだが。
「保健室のほう行ったね。じゃあ全部話していくよ。九条が今までにしてきたところから、さっきの闘技場での話まで——」
(九条サイド)
俺があの無能の卑怯な手により敗北したその次の日から日常生活は一気に地獄へと堕ちていった。
廊下で誰かとすれ違うたび無能、親だけの雑魚と蔑まれる始末だった。
最初のほうは一々反応してそれなら俺と戦えよと言ったが俺はあの無能相手に公式戦を申し入れる権利を行使してしまい、今年公式戦を行う権利を失ったので俺の力を分からせてやることができなかった。
その歯痒さとあまりのストレスから部屋に閉じ籠ったら、授業はちゃんと出ると言っただろうがと親に怒られた。ヤダとごねたら学園から退学にして親子の縁を切るぞともおどされた……。
ああ、なんでだよ……。
今、俺の近くには誰もいない。視線を合わせようとしても分かりやすく逸らされる。この前までの生活が懐かしい。近くに悠乃も加奈もいて……。
そんな俺を尻目にあの無能の隣りに西野みたいなやつがいるのもまた分からない。あんな雑魚なんかに……。
なんでなんで。全部あいつのせいなのに。なんで俺なんかが、あいつと同じことを言われなきゃならねぇんだよ……。俺にこんなこと言った奴もあの無能も死んでくれ。というか殺したい。
実際あの後、一度あいつのことを襲おうとしたが、あの良くわからない恐ろしい……いや、そんなことはない、あの卑怯な目を向けられて蛇に睨まれた鼠のように俺は動けなくなった。
ん?というかそうか……。なんで俺はこんなことに気付かなかったんだ。あの無能に分からせてやるとびっきりの方法があるじゃねぇか……。
———————————————
GW明けで体が鈍ってますね……。
次回九条くんの出番ですよ。本領発揮させます。頑張れ、僕。
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