第19話

(九条サイド)


 俺は俺より雑魚で無能な奴が可愛いカノジョを連れているのが気に食わなかった。それにおかしいと思った。


 だから奪ってやった。幸い、あいつは家庭の事情などと言って加奈とあまり一緒にいなかったので奪うのは簡単だった。パーティーリーダーという立場を利用して適当に相談に乗るふりをして誘えば余裕で落とせた。……あまりの尻の軽さに俺はなんとも複雑な気分になり、セフレ感覚になってしまったが。


 ある日、無能がダンジョン内でミスをした。そこでストレスの溜まっていた俺は流石に頃合いだと感じ、回復役の他の女子を一人パーティーに勧誘してあの無能を処分することにした。弱いから、カノジョを奪いたいからという理由でパーティーから追放しのは親から学園の方針、協調性を磨くというもの、そして社会的倫理に背くとしてかなり小言を言われそうだったので証拠の残らないダンジョンで殺すことにした。


 あの追放のときのあいつの顔は痛快だった。衝撃で何もできずに立ち尽くしているのみ。俺は力の差に酔いしれていた。


 勢いで俺は以前から目を付けていた奏多を俺のカノジョ枠に加えようとした。ただ断られた。命を人質にとれば考えも変わるだろうとまた提案したが予想に反して奏多は俺の提案を断った。それどころか無能のことを庇った。


 俺は一応もう一度訊いてやった。だがまたも俺の慈悲を拒否した。思うように事が運ばず、猛烈に腹が立った。無傷で連れて帰って俺がやったことを話されるわけにもいかなかったので無能と一緒に殺して口封じをするしかなかった。


 だが、加奈に止められて致命傷を与えたのみだった。まぁ、これでも十分だと、奴らの力では帰還できないと判断して俺と加奈は帰還した。親に事故だと言ったのに予想以上に怒られ、謹慎処分を出された。少し腹が立つ。死んだくせに迷惑かけやがって……。


 何故か奴は生きて戻ってきた。死に至る傷を負わせたはずの奏多も無傷だった。意味が分からなかった。俺らのやったことを告発されると考えると冷や汗しかかけなかった。処分はどうなるのか……。



 意味が分からなかった。奴らは俺と加奈のやったことについて言わなかった。それどころか俺らのことを庇った。


 得体の知れない不安を抱いた俺は無能の本意を探ろうとした。


 ただ、全く分からなかった。それどころかあの深い闇を抱いた目。それと特に……


「震えて眠れ」


 その言葉に思わず本当に震えさせられてしまった。こんな雑魚なんかに、俺が。ただただイラついた。その後俺に出されたパーティー解散命令により計画も瓦解して苛立ちを増やさせられるのみ。


 そしてその日から、俺は夢を見るようになった。加奈が俺以外の誰かに永遠に抱かれている夢だ。少し気分は悪かったが、特にどうってことはなかった。正直、俺には本命もいるし、体以外どうでも良くなっていたから。


 何故かある日突然俺のことを拒否し始めた。初めは困惑したがそれを悠乃と浮気という関係でも過ごすことで相殺できた。居心地が良かった。


 ただそれもダンジョン実習の少し前から崩れていた。会えなくなっていた。同時に悠乃に関する胸糞わるい悪夢を毎日見てひどく気分を損ねた。


 その最中で起きたあのダンジョンでの地獄の時間……。


 そもそもあそこで俺が蒼竜に追われているときにあの無能が俺のことを助けて身代わりになっていればあんな俺が永遠に蒼竜とゴブリンの群れに追われるみたいなことにはならなかった。


 それに悠乃に振られるなんてことも……。いや、もうそれは過ぎたことだ……。それより……極め付けは今日のあの出来事だ。あの俺にとっては俺の唯一の精神の拠り所となり加奈という大切になった人との再スタートとなった記念夜を……、考えれば考えるほどあいつが全部悪い。あいつがいなければ俺は……。


 クソがよ……。殺す殺す殺す殺す。


 絶対に俺は明日をあいつの命日にしてやる……。



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