第16話
翌日、昨日発生した蒼龍のイレギュラー出現がもたらした九条の置き去り事件の影響により学校は休みになった。何人かの生徒が呼ばれ事情聴取が行われたが、僕は呼ばれなかった。
とにかくそのおかげで九条そして救出部隊の監視は容易だった。
「強いな……」
これが三人の救出部隊に対しての僕の第一感想だった。
現役最強と言われるだけはあった。動きのキレも連携も今まで現実世界で見たことのあるどの人間よりも、異世界での僕の勇者パの仲間と同等もしくはそれ以上……。特筆すべきはおそらく僕と同年代であるということ。
それだけあって九条のいる方向に、僕は蒼龍を上手いこと使い、距離を取らせようとするがそれ以上のペースで近付いてくる。
「まぁ、いいか」
結構遊べたし。分身を通して九条のことを見ると目がおかしくなっていた。これ以上やると本当に壊れてしまいそうだった。
一旦蒼龍を遠ざけて九条に記憶操作魔法をかける。
何度もモンスターの攻撃で死にかけてたこととかは記憶上忘れてもらっても構わない。回復している理由がわからない上に、九条の言葉を借りるなら記憶になくとも体が覚えてるだろうし。
とりあえずずっと逃げてたっていうことにしておくか。普通絶対に体力持たないだろうけど火事場の馬鹿力でなんとかなったってことで。
ちなみに僕が九条を見捨てたこと自体は僕にヘイトを向けさせたいため記憶に残している。もちろん、下手に話されて即退学というのは嫌なのでそのことを誰にも話せないようにしているが。
九条に
「陸くん。あの子じゃない?」
「写真で見たけど多分そうだね」
「というか本当にドラゴンいるのか。……見た感じ蒼龍っぽいかな?」
「だね。まぁ、いいや。取り敢えず行こうか。空くん、海くんフォローお願い」
剣を片手で持った陸くんと呼ばれた男が突っ込んでいく。
弓そして魔法を使った見事なサポートによる連携攻撃で蒼龍を圧倒し、十分後には蒼龍を地に伏せさせていた。
九条が保護されて無事ダンジョンを脱出すなわち救出されたところまで見て僕は分身を消した。
そして二日後、学校が再開された。それと同時にとある噂が僕の学年に流れた。
九条がダンジョン内で悠乃を襲ったという噂だ。悠乃はどうやら教員にダンジョン内であったことを話したようだった。ただ、あまりに突拍子もない話、かつダンジョン内のモンスターが人を襲わないという法則を無視した行動などが入っていたため錯乱していたと取られてまともに受け取ってもらえていなかったが。
それでは一体誰が噂を流したのか?
実は僕が全員の頭に直接送りこんだ。少なくともこうしておけば、九条は女子を襲うようなクズ人間だという噂を流しておけば近付こうとする物好きは多分いないだろう。僕が魔法をかけている加奈を除いて。
また先日僕が加奈に魔法を解呪そして新たにかけたことにより、加奈が授業に出てきていた。
これで舞台は整った。あとは九条がしっかりと授業に出てくることを祈るだけだ。
一週間が経ち、何も知らない九条が復活して教室に来た。見た感じ疲労などはとれていそうだった。ただ色々あったのだろう。ダンジョン内の件でとある不安、そして僕に対する怒り、ただそれを発散できないというストレスを抱いているのもあり、精神面がかなりやられているのを見てほくそ笑む。
まず、加奈が授業に出てきているのを見て驚きの声を上げていた。保健室であんなことを言ったからか特に何も話しかけようとはしなかったが。まぁ、安心してほしい。それに関しても記憶を改ざんして加奈の頭からはなかったことにしているから。その証拠に加奈はまるでカノジョであるかのように話しかけているだろ。
九条がいつもの席に座り、左隣の男子に声をかけるがその男子には気まずそうな目を向けられて、避けられた。前後に座っている人に話しかけたが結果は同じだった。
怪訝そうな、不安そうな顔を浮かべてその後授業を受けていたが、数日たっても変わらずにいると流石に苛立ちだしたようで周りに訊こうとした。だが、誰も何も言わない。
そうすると結局、九条は僕の魔法の影響もあり、唯一いつも通り接してくれる加奈に走った。
そしてそれから三日後、校内で二人がイチャイチャしているのがよく目撃されるようになった。
思考解析で九条の頭を読んだが、今のあいつは悠乃のことが少し頭に引っかかる程度で加奈のことで埋め尽くされていた。もう少し。もう少しだ……。
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更新遅れて申し訳ありません。取り敢えず一旦時間に余裕できそうなので毎日更新目指します。
補足:一人でダンジョンは維持できますが、その代償として昏睡状態になります。(一応、初期設定として出したんですが…)
あと、ダンジョンが人を選びます、犠牲者を。
主人公くんが妹さんを救えない理由はこれです。
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