第13話
そして遂にダンジョン実習の日が来た。
ダンジョン前に集合し、適当に説明を受けると、僕らはクラスごとにまとまってダンジョン内に潜り始めた。
僕はその最後尾に西野さんと並んで付いていった。
一方、九条はというと先頭に立ち、今までの僕のかけた呪いと
そんな九条をダンジョンにどうやって置き去りにするか。それはしっかり考えている。
当初はクラスメイト全員を洗脳して九条を流れで追放して、置き去りにする。という案にしようと思っていたのだが、流石に無関係であるクラスメイトを巻き込むのも、記憶操作ができるとはいえ可哀そうな気がしたので違う方法を考えた。
このダンジョンは学校の管理下にあるダンジョンなので、出るモンスターやそれの危険度なども僕たちは把握させられている。ただ、ダンジョンというのは時に人智を超えてくる。例えば、ダンジョン暴走やイレギュラーなど。
僕は今回はその一つを偶然を装って使い、九条をここに置き去りにする。
そうして探索を始めて一時間ほどが経った。
僕はそろそろダンジョンの入り口で待機している先生たちとも距離が離れて、いいかなと判断して静かにとあるモンスターを先頭に立っている九条の眼前にいきなり召還した。
「——出でよ。
蒼竜はイレギュラーとして出るモンスターの一つで戦闘力的にはゴブリン一万匹以上といったところだろうか。まぁ、つまり普通の探索者が出くわしたら基本人生終了ということだ。
そんなモンスターを目の前にしてしまったクラスメイトは僕を残して思わず全員フリーズしてしまった。
「ウオォォォォォォォォォォォ!」
その状況下で蒼竜の咆哮を聴いたことにより失神しそうになったクラスメイトに僕は状態異常回復魔法を飛ばす。それにより我に返ったクラスメイトが全員逃げろぉぉ!と叫んだのを皮切りにして全員、我を忘れて蒼竜に背を向けて逃げ出した。
僕はここで九条以外の同級生にそっと弱めの
僕はわざとスピードを落とし今まで一番前に出ていた影響で最後尾になってしまった九条のところに行こうとしたところで西野さんに腕を掴まれる。危険だから走ってと叫ばれる。抵抗して西野さんに怪我を負わせてしまったりしたら面倒なので九条以外に見えない分身を出して僕本体は大人しくそのまま走り続けた。分身に意識を傾ける。
九条はヒーヒー言いながら僕の分身のいる方向に走ってきた。後ろには蒼竜。
九条は立ち止まっている僕のことを見かけるとこんな状況でも何か思いついたようでニヤリと笑った。
思考解析で九条の思考を読む。
(いいところに無能がいる。こいつを俺の身代わりにして……というかこれ口封じにもなるな……)
ああ、ゴミだったわ。
じゃああの時、加奈を捨てたときの借り?を返しておくか。
「上野ぉ!」
そう叫び、僕の腕に手を伸ばした九条の足元に石を召還し配置する。これ自体は別にただの石だ。ただ、焦っているとき、足元に気を使っていないときには凶器となる。
九条はその石につまずいて転んだ。
僕は躓いた九条を躱す。
「うわぁぁ、助けてくれぇぇ!」
後ろに蒼竜。転んだ。動けない。死を悟った九条のその声を防音魔法で防ぐ。この状況で九条を助けにくる命知らずはいないと思うが保険だ。それに殺さないから安心しろって。
もちろん僕はそんな声を無視して九条に背中を向けて置き去りにしていく。誰にも見えないようにした分身をもう一体作りその場に残すと、すたこらさっさと今までの分身を撤退させ九条の視界から消えたところで消す。意識の分散は疲れるので少しこれで楽になった。ただもう一仕事頑張ってしますか。
そして、僕はその傍ら悠乃という女子のいるクラスのところにも分身を使い、同じ龍を召還していた。
九条と同じように悠乃という女子に鈍足魔法、標的魔法をかけてクラスメイトと分断させる。
悠乃という女子が助けて!颯志くん!と言うがその声が久保田くんに届くことはない。どんどん距離が開いていく。
「ああ……ああ……、やだぁぁ!」
残念。もとから彼の視界にすら入れてなかったけど今回ので完全に脈なし、もしくは見捨てられたと知れたね。でもまだ罪の代償はこれだけじゃあ終わらないんだけどね。
僕は蒼龍を上手いこと操り、そんな色々な意味で死にかけている二人を死なせないようにして合流させた。そして同時にこのタイミングで九条から悠乃という女子に近付けないという呪いを解く。
するとどうなるのだろうか?即席蒼竜による密室修羅場の完成だね!
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次回こそ(おそらく月曜日)本気出すのでどうか……どうか……。文字数許してください……。
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