第12話

 授業で教師から約一週間後に行われるダンジョン実習の話がされた。


 これは半年に一度、学年ごとに行われるものであり、僕と西野さんがダンジョンに置き去りされてパーティーを脱退して以来、パーティーメンバーが足りていないらしくダンジョンに潜れていない九条もこれには合法的にダンジョンに潜れる。だから、僕はこれを復讐の一ピースとして使おうとしていた。簡単に言ってしまえば、僕はここで保健室に籠っていて動けない加奈の分まで九条をダンジョンに置き去りにするつもりだ。


 もちろん、果てしない絶望を与えるために置き去りにするだけで殺したりはしない。……死にかけてもらうかもしれないが。


 そしてもう一つ、これからの九条の行動の結果次第だがそこに僕はイベントを仕込もうと思っている。——見る分にはとびっきり面白い愉快なイベントを。



 放課後、九条が保健室に向かう後ろを僕は密かに尾ける。


 奴が保健室に入ると、男性恐怖症からくる何かによって加奈が来ないで!みたいなことをギャアギャア叫び出す。


 一応、うるさくて仕方ないのと誰かが来たら面倒なので部屋の周りに防音魔法を張っておく。


 ただ、それだと僕にも聞こえないので聞こえるように音の抜け道を作り、僕の耳に音量を下げて直接中の声が聞こえるようにする。すると、その叫び声にかき消されないように九条が別れよう!と叫んでいるのが聞こえてくる。


 へぇ、随分とはっきりと言うんだなぁと少しだけ感心する。適当にセフレどうとか言ったりして誤魔化して、裏では一応キープみたいなことするかと思ったのに。ただ同時に、それなら人からカノジョを寝取ったりするなと怒りがつのったが。


 僕はこの後九条に起こるであろうことを考えて堪えた。


 引き続き中の会話に耳を傾ける。


「わざわざあの無能をダンジョンで殺そうとして、お前のこと奪ったけどさ。正直、そんなんじゃお前のこと抱けそうにないし」


 九条はまぁなんでか知らないけどあの無能も西野さんも、例の事件について言うつもりないっぽいし、言ったところで誰も信じないだろうからいいけどさと付け加えるように話す。


 やっぱり、九条の人間性終わってるだろ……。なんでこいつと付き合っているやついるんだよ……。性格隠せば顔いい上に戦闘力も学園内ではかなり強い方、更に親が社会的に強いからか。ああ……。答えの分かり切った自問自答に溜め息を吐く。


 せめて大切にしてほしかったよね。まぁ、今更どうしようが許すつもりとかはないんだけど。ただ、この感じ加奈に魔法をかけるのは九条がダンジョンで苦しんだ後がいいかもな……。より効果的にするためにも。


 そんなことを考えていると中の話が終わりそうになり、九条がそろそろ出てくることを感じ取った僕は物陰に隠れたうえで、一応自分に隠密ステルスをかける。


 奴は少し浮かれたような足取りで、あたかももう悠乃という女子と正式な恋人関係になり、全てが自分の思い通りに進んでいるかのような軽やかな足取りで出てきた。


 一瞬、足を差し出したりして、転ばせたくなったが存在がバレると面倒なので足に羽の生えている奴を見送る。


 思考解析によってこの後、九条が悠乃という女子と正式に付き合うために話をしに行くことを知っていたので、悠乃という女子にエールを送っておく。


 あいつの自信をいい感じに打ち砕いてくれよと。



 それから奴は一週間すべての行動が空回りし続けた。


 いくらメールを送ったところで悠乃という女子側が連絡先を消しているので永遠にそれが届くこともない。また、直接会いに行こうにも話しかけようとしたところで誰かしらが九条に話しかけて邪魔をしたり、何故か突然九条の体が金縛りになって、その目の前で悠乃という女子が久保田くんの追っかけのようなものをやっているのを見せつけられたりした。


 それと僕の見せる悪夢ナイトメアでじわじわと奴は嫉妬、苛立ちなどに蝕まれ歪んでいった。元々、他人のカノジョを寝取ったり、浮気をしたりするような奴だから歪むというのも少し違う気がするが。


 ただ、奴はこれだけのことが起きても全くもって悠乃という女子が自分のことを嫌っているということなど考えたりすらしなかった。


 思考解析によると運が悪いだけ、俺のことを嫉妬させようとしてるだけだと少し現実逃避味も入った理由付けをしているらしい。


 こうなってくれるなら良かった。ダンジョン内でのサプライズイベントもより楽しめそうだな。そう僕は笑みをこぼした。




———————————————


更新頻度落としても以前の文字数をこなせない僕を許してください。高二忙しすぎるだろ……(溜め息)

明日頑張ります。

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